ベトナムでZ世代の若者に人気のSNSであるTIKTOKでは、投稿タイトルやハッシュタグで、様々なトレンドが表面化されます。

カントーでの“ウェルネス旅行”の紹介記事

2024年現在、“chữa lành”(癒やし、という意味)や“healing”というキーワードが、ソーシャルチャレンジやヒット曲タイトルに混じって検索100位以内に入ることがあり、これは若者が社会に癒やしを求めているということなのではないか、という記事が地場メディアに掲載されていました。

ベトナムでは、2024年はベトナム国会は6.0~6.5%の成長率目標に設定していて、引き続き安定した経済成長することが見込まれます。中間層の拡大から、給与があがり余暇に海外旅行したり、買い物に熱中する若者が増えています。市場調査でも、生活する以上にお金に余裕が出てくると、消費する先や新しい情報・娯楽を常に求めているという傾向がわかります。

ただその一方で、学校での勉強や仕事に追われ、社会のプレッシャーに疲れている人が多いようです。

記事によると、インターネットテクノロジーとソーシャルネットワークの急速な発展による疲労や日々のストレスや生活のプレッシャーを感じる若者が増えており、“癒やし”としてデジタルデトックスや短期瞑想コース、キャンプ旅行、静かなカフェでの読書や瞑想・ヨガなどのリラックスできるアクティビティーを選択するとのことです。

各国の市場調査によると、世界的にZ世代(概ね1990年代後半から2000年代に生まれた世代を指す)の若者は、個人の価値観を重視し、「モノ」消費ではなく「コト」消費であるとされています。メンタルヘルスへの関心が強いとされ、米国の心理学会は、Z世代が他のどの人口統計の年齢層よりも精神的健康上の懸念を報告する可能性が高いという見解を示しています。

一方で、ベトナムでは、専門資格を持たない人々が検閲を受けずにこのようなサービスを提供しており、多くの人々が「癒し」というキーワードだけを頼りに、専門知識を持たない人々からのサービスや詐欺まがいのトラブルもあるようで、多方面で注意喚起がされています。

国会で臨床心理士の職には医療省の証明書が必要となる医療検査と治療に関する法律が可決されるなど、この分野の法整備も進んでいます。国民の幸福度の向上や生産性にも影響があるため、政府も国民に足して“癒やしの機会を作り、疲れたらしっかり休みましょう”というようなメッセージを発信しています。

ベトナムではメンタルヘルスケアは注目を集めている分野です。ベトナム保健省や国立精神衛生研究所精神科(ハノイ医科大学)によると、人口の14.9%に相当する約1,500万人の精神疾患の患者がいるとされ、対策が議論されています。

ユーザー7,000万人“大国”、若者のSNS疲れという反動も

前述の記事の中で、『友達が旅行をしている写真をSNSで見て、私のFOMOが刺激されてしまいました』というような文章がありました。FOMOとは、fear of missing outの略語で、獲得できるチャンスを逃してしまうという恐怖感を意味します。投資の世界などで使用される言葉で、現代の情報化社会を象徴するとされています。

筆者はアラフォーで、物心がついたときから常に多大な情報に囲まれて育ったという、所轄デジタルネイティブの世代ではありません。そのため、とくにSNSに依存して疲弊したりはしないのですが、こういう記事を見て、「ああ、若者は大変そうだな。。。」と思ってしまいました。日本でもSNS疲れは話題になりますが、このあたりは約1億人の人口で、SNSユーザーが7,000万人いるとされる(注:世界の統計データを提供する「DIGITAL 2023 VIETNAM」レポート参照)という“SNS大国”であるベトナムでも、同じようなことがあるかもしれません。

一方で、『このような若者の癒やしのトレンドは労働などを怠ける理由になっているのではないか、もしも毎日一生懸命働いていれば忙しくてこんな悩みはありえません』というような、手厳しいコラムも見受けられます。このあたり、世代間でもジェネレーションギャップもあるのかもしれません。

“癒やしブーム”から新たな消費傾向が生まれる可能性も

日本では、バブル崩壊以降の90年代中頃から“癒やし”というキーワードがメディアで使われてきました。アロマテラピー、マッサージ、オーガニック食品、ヨガ、ヒーリング音楽のコンピレーションCDなどがありました。あとは、TV広告などで癒し系女優という言葉もありましたね。これらは一時的なトレンドでは終わらず、今の日本にも根付いています。

近年、韓国や中国の若者にも同じような傾向があります。いずれにせよ、時期や世代は違えど、ベトナムも例外ではないのでしょう。ベトナム国内でも、このような“癒やし”から、今後根付いていく大きな流行やライフスタイルが生まれるかもしれません。

MAI INTERNATIONALでは、このような若者のトレンドに関わる現地の最新事情や市況を踏まえた市場調査や戦略策定が可能です。是非お気軽にお問い合わせ頂けますと幸いです。