ベトナムでのここ数年の大きな変化といえば、「非現金決済サービス」の浸透が挙げられます。以前は、“ベトナム消費者は現金主義なので、カード払いも浸透しないので、非現金決済は進まない”というような言説がありましたが、大きく状況が変わってきています。
非現金決済は国内の金融界でも話題になっており、国営銀行決済局長は公式発表でも「2023年は年末までに非現金決済は年間で約110 億取引に達した。これは2022 年と比較して50% 近く増加したことになる」と言及しました。
このような、ベトナムにおける非現金決済の拡大は、デジタル化の波に乗り、国民の生活様式が変化していることが大きな要因です。ベトナム電子商取引協会(VECOM)の市場調査で2025年には300億USDに達すると言われているほど、EC市場が順当に成長しているという、消費市場の変化による影響もあります。
米国の大手決済ブランドVISA社の市場調査レポートによれば、ベトナム人は現金を使わない日が増え、特にQRコード決済の利用が拡大しているようです。これは、スマートフォンの普及と電子ウォレットの便利さが受け入れられているという証左であり、現金を持ち歩く習慣が減少していることを示しています。同調査では回答者の62%がQR決済を利用していると回答したとのことです。平均すると、ベトナム人はこのQR決済関連のコードを月に16.2回もスワイプしているという結果でした。これは、銀行カードの使用(月に約12 ~ 13回) よりも多い頻度であるとのことです。
また、国内銀行のデータによると、2024年1月末時点で市場のATM数は20,986台で、これは2023年の同時期と比べてなんと2%近く減少しています。驚くことに、経済成長に反し、ベトナムでは設置されているATMが減っているというのです。休日やテトによく見られるATMの過負荷現象はもう起こらなくなってきているとされ、これも非現金化の進展を物語っています。これまで、“消費が集中するテト前はATMから現金がなくなる(ので、引き出しは早めに済ませておく)”というケースがありましたが、昔話のようになっていくでしょう。
ベトナムの非現金決済市場において、EC最大手が展開するShopee Pay、 日系金融機関も出資するMOMO、地場ベンチャーVNPAYといった企業がキープレーヤーとして活躍しています。これらの企業は、ユーザーフレンドリーなインターフェースと多様なサービスを提供し、消費者にとって魅力的な選択肢となっています。特にMOMOは、スーパーアプリへの野心を持ち、投資やM&Aを通じてサービスの多様化を図っています。ShopeePayはECモールを展開するの強みを活かし、またVNPayは地元の小売店とのパートナーシップを強化しています。
地場の経済メディアFiinGroupの予測によると、2024年末までにベトナムでは合計5,000万アカウントの電子ウォレットが運用されるとされており、これは昨年比で40%の増加を意味します。非現金決済の取引数は2023年に50%増加し、特にQRコード決済がリードしているとのこと。1億人の人口でインターネット人口が7割だと仮定しても、非現金決済アカウントが5,000万アカウント運用される、というのは驚異的です。この勢いは今後も続き、ベトナムが東南アジアで非現金支払いの変換をリードする可能性もあります。
郊外のインフラ面の問題や安全性や信頼性まだまだ課題も多いのですが、今後もこの分野は成長していくことが予測され、興味深い分野です。
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