【ベトナムのヘルスケア市場規模および医療支出額】

 

フィッチソリューションズの発表によると、2020年のベトナムのヘルスケア市場は、162億USDとGDPに占める割合は6.0%に達し、医療支出額に関しても増加し続け、2025年には「2,330億USD」、2030年には「3,380億USD」に達し、年平均成長率は7.6%で推移すると予測されています。

先日のブログ「ベトナムの医療体制」でお伝えしたように、医療保険加入率が90%を超えているものの、保険でカバーできる範囲が限定的である事から、自己負担率は43%となっており、先進諸国の14~20%と比較して2~3倍と大変高い水準である為、政府は2025年までに患者の自己負担率を35%、2030年までに30%まで引き下げる事を目標として掲げています。また、レ・バン・カム保健省医療保険部長は対策として、「医療保険の適用範囲を拡大して受診者の権利を向上させるために保険料率を引き上げるべき」とし、引き上げ幅については慎重に検討する必要があると2021年4月6日に保健省医療保険部の代表者が開催したセミナーで指摘しています。

【2022年10月現在の保険料率は基本給の4.5%(会社負担:3%、労働者負担:1.5%)】

 

【参照:保健省】

【今後迎えると予測される高齢化社会】

 

ベトナムにおいて、GMP認証取得コンサルティングを行っている「GMPs Joint Stock Company」によると、一人当たりの医薬品支出額は、2005年9.85USD、2010年22.25USD、2015年37.97USD、2017年56USD、2019年75USDと順調に金額を伸ばしていますが、近年の経済成長以外、今後迎えると予測されている高齢化社会化もこの一因となっていると言われています。

統計総局が2019年12月に発表した、「2019年4月1日0時の時点での主要20指標」によると、ベトナム国民の年齢別構成比は、「15歳以下:24.3%」、「15歳以上64歳以下:68%」、「65歳以上:7.7%」となっており、比較的若年層の多い人口構成となっていますが、IMFによるとベトナムの人口は今後数十年で急速に高齢化し、60歳以上の人口を15〜59歳と比較する老齢率は、今後25年間で2倍になると予想されています。

また、出生率に関しても、1989年は3.8でしたが、30年後の2019年は2.09とかなり低下しており、地域別にみると「中部高原地域」および「北部山岳地域」が最も高く2.43、「ハノイ市を含む北部ホン河地域」が2.35、「ダナン市を含む中部地域」が2.32であるのに対して、「ホーチミン市を含む南部」は1.56%、「南西部メコンデルタ地域」は1.80と低くなっている。

 

 ベトナム政府も近年、ホーチミン市等の出生率の低い21省・市で、35歳までに子供を2人出産した女性には現金等を支給するなど、様々な少子化対策が導入しており、2020年4月28日にフック首相(当時)は、2030年までの地域・対象別出生率調整プログラムを定めた「決定588/QD-TTg」を公布し、保健省より、「通達01/2021/TT-BYT」が施行されています。

【参照:統計総局】

【ベトナム市場での健康食品販売】

この様な背景から、ベトナム市場では今後も益々ヘルスケア市場が盛り上がる事が予測されており、弊社にも多くの日本企業から「ベトナムのヘルスケア市場」特に、「ベトナムの健康食品市場」に関するお問合せを頂いております。

ベトナム市場向けに、健康食品を輸出販売する上で、最も重要な点は「開示手続き」であり、「健康食品、医学的な栄養食品、特別用途食品、36ヵ月以下の子供用栄養食品」をベトナムへ輸入する企業は、「食品安全法の施行細則を定める政令15/2018/ND-CP」の第6条、第7条、第8条により、保健省または、保健局において、「商品開示書登録手続き」を行う必要があるとされています。

弊社では、健康食品をベトナム市場で販売されたいお客様向けに、「ベトナム市場調査」「ディストリビューターとのビジネスマッチング」「開示登録手続き代行」等を行っておりますし、弊社自身が日本から青汁等の健康食品をベトナムへ輸入し、Long Chau薬局などのチェーンストア向け販売および、SCJやHyundai等の大手TVショッピングで販売している経験を持っておりますので、なるべく簡潔にご説明をさせて頂きます。

 【開示登録手続きは誰がやる?】

開示登録手続きは、前述したように、ベトナムへ輸入する企業が行うものなので、日本側の輸出者は開示登録に必要な書類やサンプルをベトナム側に提供するという立場で、要するに、日本から健康食品を輸出販売する際、まずディストリビューターを見つける必要があるという事です。

ディストリビューターと商談を行い、取引条件が合意してから、実際の輸入前に開示登録手続きを行うという流れになります。

【健康食品の開示登録手続きに必要な書類は?】

ア.   食品安全規制へ準拠している事の宣言書

イ.   自由販売証明書(CFS)※日本側準備

ウ.   事業登録証明書(ERC)

エ.   GMP認定書(健康食品の)※日本側準備

オ.   製品試験証明書(ベトナムでの分析証明書)※日本側でサンプル準備(粉末300g、液体700㎖が目安。)

カ.   製品のサブラベルサンプル

キ.   定期的な監視計画

ク.   定期的な品質管理計画

ケ.   健康食品の使用に関する科学的根拠に基づいた文章

コ.   パッケージデザイン(PDFファイル等)

サ.   パッケージデザインに掛かれた文書をベトナム語翻訳した物

※ 日本側の準備書類は公証化手続きが必要なので注意が必要。

 

これらの書類を全て準備した後、保健省食品安全局に提出し問題が無ければ3~4ヶ月で開示許可証が発行されます。

【健康食品開示登録に関する留意点は?】

◆分析用のサンプルが必要

開示登録手続きを行う際には、管轄当局により指定された検査機関もしくは、ISO17025に準拠していると認定された検査機関において、「食品安全性試験」を受ける必要があります。

「食品安全性試験」とは、いわゆる成分分析試験であり、必要な分析用サンプル料の目安として、液体物であれば700ml、粉末状は300g程度ですが、製品により必要サンプル量は異なるので、現地パートナーとなるディストリビューターに必要量を予め確認する事をお勧めします。

◆上限摂取量が国により異なる事もある

ポイントとして、各有効成分の接種上限値の設定が、ベトナムと日本で違うものもあるので、パッケージに記載されている一日の接種目安等を変更しなければならなくなる事もあります。

例えば、葉酸に関してベトナムでは「14~18歳の男女」で800μgとなっていますが、日本では「12~29歳の男女」で900㎍です。

仮に、日本の青汁で葉酸量が、1包300μgで1日3包までとした場合、ベトナムでは摂取上限が800㎍/日なのでオーバーとなります。

自由販売証明書(CFS)が必要になる

例えば、「化粧品の開示登録手続き」に関してCPTPP加盟国は提出不要という事になっておりますが、健康食品に関しては未だに必要とされています。

◆GMP認定証が必ず必要になる

以前は必須では無かったのですが、現在では「健康食品に関するGMP認定」が必須となっております。

日本では、「公益財団法人日本健康・栄養食品協会」、「一般社団法人日本健康食品規格協会」のいずれかの機関が、厚生労働省の「健康食品GMPガイドライン」に基づいて認定しています。

◆開示登録に関する費用はどのくらい?誰が払う?

これは、食品安全性試験の費用も含めて、一般的な金額を言うと、1,500~2,000USD/1SKU程度の事が多いです。

ディストリビューターの中で慣れている会社の場合、自社で申請を行うので、これよりも安くなる場合がありますが、中小企業で慣れていない場合は、開示登録をサポートしてくれる会社のサービスを使うので、この金額よりも高くなるという事もあります。

費用負担に関しては、会社や製品により異なりますが、日本側が費用を負担し、ベトナム側が手続きを行うという事も多くなっています。

ディストリビューターが負担する場合、どうしてもその金額を商品原価に入れなければならないので、販売価格が高くなってしまうので、新規商品はなるべく多くの人に手に取ってもらいたいと考え、日本側が負担するという考え方もある為です。

その為、ディストリビューターを選定する際には、なるべく複数の候補企業と同時に商談を進めていき、その際に開示登録に関する費用や考え方を聞取りし比較するという方法が望ましいのではないかと思います。

◆開示証明書の取得期間は?

これは、順調にいけば書類提出日起算で3~4ヵ月程度という事が多いです。

もちろん、初回書類提出をした後、食品安全局から追加説明を求められる事もありますので、その場合、期間が延びていくイメージです。

◆開示登録以外の注意点は?

輸入した化粧品に関するオンラインマーケティングを実施したり、テレビショッピング等で販売する際には、食品安全局に広告ライセンス【Giấy xác nhận nội dung quảng cáo(広告内容確認証)】を申請する必要がありますが、取得金額はだいたい700~1,000USD/SKU程度になる事が多いです。

弊社では、日本の医薬品メーカー様のOTC医薬品に関して、「製薬卸企業とのビジネスマッチング」「法律事務所と共同での薬事登録サポート」を行っています。

医薬品はACTDをベースにしており、長期保管要件などの様々な問題から日本側では準備できないような書類も多くなる為、書類準備だけでも本当に大変ですが、それと比較した場合、健康食品登録の難易度はかなり低くなっています(もちろん、簡単という事ではありませんが)。

しかしながら、周辺国の状況を見ると年々管理規定が厳しくなる事が多く、ベトナムも前述したように「健康食品のGMP認定証」が必須になるなど徐々に難易度が高くなっている事は事実です。

弊社では、お客様の展開を「市場調査(市場規模調査・競合調査・輸入量分析調査・消費者調査など)」「ビジネスマッチング」「開示登録手続きサポート」「オンラインマーケティングサポート」「販売代行」等の幅広いメニューでサポートをさせて頂いておりますし、自社で健康食品を輸入し、オンライン・オフライン・TVショッピングで販売している実績がございますので、ベトナムで健康食品の販売を検討される際には、お気軽にお問合せ頂ければ幸いです。