開発余地が大きい成長市場

ベトナムでは経済成長と共に年々、小売市場が拡大しており、昨今ではベビー用品小売チェーンも増えています。
平均年齢が31歳と若く、全人口に占める若い世代の割合が高い国であり、各世帯の平均収入も年々増加しており、
ベビー用品市場は60~70億米ドルと推定されています。
また、ニールセンによる2020年の市場調査によると、この市場は年間30-40%の成長を遂げているとの事です。

これまで、ベビー用品市場は“3強”として考えられていました。
最大手とみられる企業は、今年、ホーチミン市に大型店舗をオープンし注目を集めた「Con Cung」(コンクン)です。
全国に654店舗を展開しており、2021年売上は約3億米ドルとされています。
同社の店舗では、ありとあらゆるベビー・マタニティ用品を揃えており、日本ブランドの商品も数多く取り扱っています。

※Con Cung店内の様子(公式Facebookより)

また、「Con Cung」を追う、164店舗を展開する「Bibomart」(ビボマート)、157店舗の「KIDS PLAZA」(キッズプラザ)があり、
この3社が長らく同業界を牽引している存在です。
ベトナムで生活していると、この3社はいたるところに出店をしているため、非常に馴染みがあるのですが、地場の市場調査会社の
VNDIRECTのレポートによると、これらチェーン店舗は市場全体の20%に過ぎず、多くはパパママショップの様な小規模店舗や
伝統的市場が占めており、今後の開発余地が大きい領域であるとされています。
この様なベトナムのベビー用品小売市場ですが、今年に入って大きな変化が起こりました。
それは、ベトナム小売市場で大きな影響力を持つ「モバイルワールドグループ」(MWG)の参入です。

最大の小売りグループによる市場参入

同グループは、黄色と黒の看板が目印の全国に3,160店舗を展開する携帯電話販売チェーン「The Gioi Di Dong(テーゾーイードン)」の
運営企業で、「The Gioi Di Dong」の成功から、家電量販業態「Dien May Xanh(ディエンマイサン)2,138店舗」、ミニスーパーマーケット
業態「Bach Hoa Xanh(バックホアサン)2,158店舗」、ドラッグストア業態「An Khang(アンカン)359店舗」など展開しています。
※店舗数は、2022年6月10日現在

積極的な拡大路線を続けており、ベトナム小売業界の成長を象徴するような企業で、グループ全体で約8,000店舗を運営しています。

同グループは、今年に入り「AVA KIDS」といる名称でベイビー用品販売店の展開を開始し、わずか5ヶ月で50店舗を開店させました。
MWG代表者は「今後2年間で、この分野のトップになる。」と発言しており、なんと年内に200店舗を超える計画を発表しました。
また、「AVA KIDS」の売上に占めるオンライン販売のシェアは25-30%に達しているという事でした。

「AVA KIDS」の店舗開店の様子(公式WEB)

同グループの大きな特徴として、圧倒的なドミナント展開、オンラインでの強さ(EC市場でもNo.3)、消費者が安心できる知名度があります。
おそらく、ベイビー用品の分野でも前述3社を脅かす存在に成長していくと考えられます。

今後、ベトナムのベビー用品市場は市場の拡大と共に、「輸入品中心の高級路線店舗」、「ギフト専門店舗」、「写真撮影などを含む
イベントスペース併設店舗」、「レンタル店舗」など、より付加価値を持たせた業態へ細分化が進んでいくと思われ、それに伴い、
更に外資企業参入の余地が産まれ、市場全体が一層拡大していく事が予測されます。

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