ベトナムは今後、急速な高齢化社会を迎える事が予測されており、その事がヘルスケア市場の展望に影響を及ぼしています。また、新型コロナウイルスの流行が、製薬業界、特にドラッグストアチェーンの成長を加速させ、多くの大手小売企業は成長の機会を求め、この分野に多額の投資を行っています。
【モバイルワールド社】
2021年11月に、前回のブログでご紹介したモバイルワールド社は、「An Khang Pharmacy(アンカンファーマシー)」の株式12億9,200万株を購入し保有比率を従来の49%から100%とし、これによりアンカンファーマシーは、モバイルワールド社の完全子会社となりました。
モバイルワールド社の会長である、グエンドゥックタイ氏によると、現在、各店舗の月間売上は約5億ドンであり、損益分岐点に達し始めており、今後は収益を増やし、各店舗のコスト最適化を実施する為、いくつかの新しいモデルを構築しており、2022年中に店舗数を急速に増やす計画がある事を明らかにしています。(実際、2022年6月14日現在、366店舗まで増えています。)
また、タイ氏は、トレンドとして従来の治療薬よりも「予防や健康促進製品」の売上が伸びており、これはドラッグストアチェーンが成長するのに適切な時期だと示していると語りました。
【FPTデジタルリテール社】
ドラッグストアに多額の投資をしている小売企業として、大手通信会社FPTコーポレーションの傘下企業である、FPTデジタルリテールジョイントストックカンパニー(FPTリテール)があります。
2012年に、FPTコーポレーションの完全子会社として設立され、ベトナム全国で、FPTショップという携帯電話やラップトップなどの電子機器を販売されるショップや、F Studioというアップルのプレミアムリテールショップ等を展開しており、一時期はカンボジアでもショップ展開を行い海外にも進出していました。(既に撤退。)
2017年に、ホーチミン市の有力ドラッグストアチェーン、Long Chau薬局を買収し、ヘルスケア部門に参入しましたが、当時、ベトナム市場では、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、家電量販店、携帯電話販売店などのモダントレード化が進む一方で、ドラッグストアチェーンが極端に少なく、医薬品の購入はOTC薬局と言われるいわゆるカウンター薬局(全国に約55,000店舗存在すると言われる小規模薬局)ばかりで、開発の余地が高い事から異業種からの参入を決定しました。
2022年6月14日現在で、全国にFPTショップ801店舗、Long Chau薬局636店舗を展開しておりますが、毛携帯電話・電子機器販売のFPTショップに関して、モバイルワールド社(携帯電話販売店3,160店舗、家電量販店2,138店舗、ミニスーパー2,148店舗、ドラッグストア366店舗経営)に次ぐ店舗数、ドラッグストアとしては、Pharmacity社(1,146店舗)に次ぐ店舗数を展開しています。
Long Chau薬局は、2021年の年初時点では240店舗でしたが、現在は636店舗とコロナ禍にも関わらず積極的に展開し、約1年半で店舗数は2.65倍まで拡大しています。
設立当初は、FPTコーポレーションの完全子会社でしたが、2018年4月26日にホーチミン証券市場に上場し、現在では外国人所有比率も19.4%となっています。
【ファーマシティ】
2011年末に、ベトナムで長年働いていたアメリカの薬剤師であるクリス・ブランク氏により設立された、Pharmacity Pharmaceutical Joint Stock Company(ファーマシティ)は、ドラッグストアチェーンとしては最も多い1,146店舗(2022年6月14日時点)を展開しており、およそ8%の市場シェアを占めていると言われています。
同社は、約3,500人の薬剤師が在籍しており、消費者への丁寧な対応を心掛け、多店よりも低価格でマスクなどの抗エピデミック商品や、医薬品、健康食品などを販売している事で知られています。
2025年までに5,000店舗をオープンし、人口の約50%が車で10分以内で同店へ買い物に来れるという状態を目指しており、また、およそ700万人の同社顧客を医師、診療所、病院、保険会社とつなぐアプリを構築する予定という事です。
【ファノファーマシー】
Pha No(ファノファーマシー)は、以前はドラッグストアチェーン業界の先頭を走っていた企業で、2017年まで、ファノファーマシーは60店舗展開していたのに対して、Pharmacityが39店舗、Sapharo(サイゴンファーマシューティカルが18店舗、Phuc An Khang(現在のアンカン)が18店舗という状況でしたが、異業種からの新規参入も相次ぎ、その地位を他社に奪われ、2021年1月時点では40店舗まで店舗数が減少しました。
現在では、スーパーマーケットのWinmartや、コンビニエンスストアのWinmart+を展開するマサングループと業務資本提携を締結しており、今後の展開が注目されています。
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ベトナム市場における医薬品小売売上高は、医薬品総売上高の約30%と言われており、ブラジル64%、フィリピン80%等と比較するとまだまだ小さい事から、優れた管理プロセス、コスト最適化の利点を備えたドラッグストアチェーンは、開発の余地が大きいという事は以前から言われています。
また、ベトナムの人口は前例のない速度で高齢化しており、65歳以上の人口比率が7%から14%に増加するまでにかかる時間は18年間と、タイ、日本、オーストラリア、フランスよりも早い水準で、2026年から2039年にかけて、65歳以上比率が総人口の15%を超えた高齢化社会に入ると予測されています。
統計総局によると、2038年に60歳以上人口は総人口の20%(約2,100万人)、2050年には25%(約2,700万人)という予測が立てられています。
この様に、ベトナムのヘルスケア市場は、成長著しい市場ですが、様々な要因から素早い対応・変革が求められています。日本からの市場参入をご計画の際にはぜひ、経験豊富なマイ・インターナショナルへお気軽にお問合せください。