この記事のポイント
- 燃料価格の高騰を受けてベトナム航空が対策
- ベトナム政府も支援策を発表
- どうなる今後の航空業界、引き続き注視が必要
航空燃料価格の急騰で、ベトナム航空各社がコスト削減を強化
ベトナム航空業界では、世界的な航空燃料価格の高騰を受け、各社が運営コストの引き締めを進めています。とくにベトナム航空は、投資プロジェクトや運営費の削減に加え、役員報酬の見直しにも踏み込んでいます。関連する記事が地場メディアにあったので紹介いたします。
2026年5月15日に開催されたセミナー「航空・観光需要を刺激するための解決策」において、ベトナム航空副社長兼パシフィック航空取締役会長のディン・ヴァン・トゥアン氏は、中東情勢による燃料価格の変動が航空業界に大きな影響を与えていると述べました。
ベトナム航空:会長給与を半減、副社長は40%削減
ディン・ヴァン・トゥアン氏によると、航空燃料価格は時に2倍、3倍に跳ね上がることがあり、航空会社の運航コストを大きく押し上げています。こうした状況はベトナムだけでなく世界の航空会社に共通しており、多くの企業が経営上の圧力に直面していると説明しました。
ベトナム航空では、乗客への負担増や航空券価格への過度な転嫁を避けるため、まず社内のコスト管理を強化しています。同社は新型コロナウイルス感染症流行時に実施していた対策を再び活用し、投資プロジェクトや運営費の削減、交代制休暇、無給休暇、役員給与基金の調整などを進めています。
具体的には、会長の給与を50%削減し、副社長の給与を40%、部門長の給与を30%削減しています。燃料価格の上昇分をそのまま航空券価格に転嫁するのではなく、まずは経営側・組織側で負担を吸収しようとする姿勢が見えます。
運航面でも燃料費を抑制:ルート、着陸方式、給油地を見直し
ベトナム航空は、人件費や投資費用の削減だけでなく、実際の運航面でもコスト削減策を講じています。紛争の影響で航空交通量が減少している状況を活用し、飛行時間を短縮できる代替ルートを要請しました。
また、主要空港では燃料消費を抑えられる着陸方式を採用し、給油地の選定にも柔軟に対応しています。原油価格や燃料価格が高い国での給油を避け、近隣国のより安価な燃料を利用することで、運航コストの抑制を図っています。
航空会社にとって燃料費は避けられない大きなコストです。そのため、単に人件費を削るだけではなく、飛行ルート、着陸手順、給油戦略まで含めた細かな運航最適化が重要になっています。
燃料以外のコストも上昇:リース料、整備費、部品代が重荷に
航空会社を圧迫しているのは燃料価格だけではありません。航空機のリース料、整備費、スペアパーツ代なども上昇しており、各社の運営コストは複合的に増加しています。
さらに、国際市場では航空機の供給不足も続いています。新規機材の確保が難しいなか、航空会社によっては運航を維持するために保有機材の規模や運航計画を調整せざるを得ない状況です。
つまり、ベトナムの航空業界は需要回復の一方で、燃料、機材、整備、人件費という複数のコスト要因に同時に向き合っています。旅客数が増えているからといって、航空会社の収益環境が一気に改善しているわけではありません。
ベトラベル航空:価格競争ではなく、運航最適化と収益源の多様化へ
ベトラベル航空の営業部長であるズオン・ホアン・フック氏は、同社が単純な価格競争ではなく、フライトネットワークとスケジュールの最適化、収益源の多様化に注力していると述べました。
同社は航空券収入だけに依存するのではなく、付帯サービスの拡大や観光エコシステムとの連携を進めています。航空券、旅行商品、周辺サービスを組み合わせた統合的な商品パッケージを開発することで、収益性の向上を目指しています。
フック氏は、現在の競争力を決めるのはチケット価格そのものではなく、業務の最適化、コスト管理、差別化された商品の開発、そして長期的な顧客信頼の構築能力であると述べています。航空会社にとって、安さだけで勝負する時代から、運営効率と商品設計で競う時代へ移っていることがうかがえます。
政府は航空燃料輸入税を0%に引き下げ、追加支援も検討
航空会社のコスト負担を軽減するため、政府は航空燃料の輸入税を6月末まで0%に引き下げています。ただし、ベトナム民間航空局航空輸送部長のブイ・ミン・ダン氏は、この措置だけでは航空会社が損益分岐点に達するには不十分だとの見方を示しました。
同氏によると、規制当局は優遇税制の延長、航空会社や燃料供給業者への信用支援、特定路線における燃料サーチャージ制度など、複数の対応策を検討しています。燃料価格の変動が長引けば、税制支援だけでなく、金融面や料金制度を含めた包括的な支援が必要になる可能性があります。
航空業界は観光、物流、地域経済とも密接に関係しています。そのため、航空会社単体の経営問題にとどまらず、観光需要の回復や国内外の移動需要をどう支えるかという政策課題にもつながっています。
第1四半期の航空旅客数は2,410万人超、需要は回復基調
ベトナム民間航空局のデータによると、第1四半期の航空輸送市場の旅客数は2,410万人を超え、前年同期比で16%以上増加しました。このうち、国内線旅客は1,020万人以上、国際線旅客は約1,400万人でした。
需要面では回復が続いているものの、航空会社の収益環境は依然として楽観できません。旅客数の増加が売上拡大につながる一方で、燃料費や機材関連費用の上昇が利益を圧迫しているためです。
今回の各社コメントから見えるのは、ベトナム航空業界が「需要回復後の成長局面」に入りながらも、同時に「高コスト体質への対応」を迫られているという点です。今後は、航空券価格の動向だけでなく、燃料税制、燃料サーチャージ、運航ネットワーク再編の動きも注目されます。
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※本記事は公開時点の情報をもとにした一般的な解説です。最新の法令・通達・解釈は必ず関係当局や専門家にご確認ください。