郵便局が“百貨店”に変身

ベトナムの国営郵便サービスとして国民の生活に浸透している(vietnam postのWEBからの引用)

ベトナムの国営郵便事業者 Vietnam Post は、2025年から「Bách hóa Bưu điện(郵便局百貨)」という新モデルを本格展開しています。
これは、全国ネットワークを持つ郵便局を“生活密着型の小売店舗”として再構築する試みで、日用品・食品・化粧品など約2,000アイテムを販売。郵便や公共料金支払いといった従来業務に加え、生活インフラ機能を拡張するものです。
ハノイでは「5 Phạm Hùng」「66 Tràng Tiền」などの郵便局で既に稼働中。Vietnam Post は2025年末までに全国200店舗を目指す計画を発表しています(出典:VnExpress、Lao Động)。

■なぜ今このモデルが始まったのか

郵便局網はベトナム全土に 約13,000拠点(郵便局・代理店含む)あり、地方でも高い認知度と信頼性を持ちます。
しかし、近年は郵便・物流業務の収益性が低下しており、Vietnam Post は「収益多角化」と「地域経済の活性化」の両立を狙っています。
また、地方では依然として近隣にスーパーやコンビニが少なく、消費者がアクセスしやすい新しい小売拠点が求められていました。
郵便局を活用すれば、すでにある不動産と人員を用いて低コストで展開可能という利点があります。

日本企業にとっての意味・チャンス

Bách hóa Bưu điện は、単なる新業態ではなく、地方への販路拡大チャネルとして注目すべき存在です。
Vietnam Post の全国ネットワークと物流機能を活用すれば、これまで販売が難しかった地方都市・農村へのアクセスが現実的になります。


▼日本メーカーにとっての活用可能性
• 地方の消費者向けに生活雑貨・加工食品・医薬部外品などを試験販売
• 郵便局併設の物流・保管網を利用したB2B・B2Cの地方デリバリー展開
• Vietnam Post と提携する現地小売サプライヤーとの協業
• 政府系インフラを介した販売で「信頼性の高いルート」としてPR可能


特に、地方市場(Tier 2〜Tier 4)の需要掘り起こしを狙う日本企業にとっては、既存のモダントレード(Aeon、Winmart、Coop Mart)とは異なる「国営+地方密着型チャネル」として活用余地があります。

現状はまだまだ課題も

• 品揃え・在庫管理・利益率など小売運営ノウハウがまだ発展段階
• 店舗ごとの販売規模は小さく、初期段階ではPR・テスト販売的な活用が現実的
• 価格競争が激しいカテゴリー(食品・日用品)では、単独展開より**共同プロモーション型(Vietnam Post+日本ブランド)**の方が効果的


ただし、ベトナム政府系インフラ(Vietnam Post)は政策的支援を受けやすく、ブランドの信頼性向上にも寄与します。

今後の展開と展望

Vietnam Post はこのモデルを「全国郵便網の多機能化」として発展させ、将来的には電子商取引(E-commerce)との統合も見据えています。
たとえば、郵便局店舗をオンライン注文の受け取り拠点(Pickup Point)や返品受付所にする構想もあり、
EC × 物流 × 小売の融合モデルになる可能性があります。
つまり、Bách hóa Bưu điện は「地方流通の再構築」と「国営インフラの民間活用」を同時に進める動きであり、
日本企業がベトナム地方市場にアプローチする新たな入口となる可能性があります。

2025年10月に催されたハイフォンでの開店セレモニー(vietnam postのWEBからの引用)

郵便局が“地方の小売ハブ”になる時代へ

Vietnam Post の “Bách hóa Bưu điện” モデルは、地方市場の流通網を大きく変える兆しを見せています。
これは単なる店舗拡大ではなく、「行政 × 小売 × 物流 × デジタル」が融合する社会インフラ型ビジネスの始まりです。
日本企業にとっては、これを単なるニュースとして見るのではなく、
「地方展開の販路パートナー候補」「テストマーケティングの場」として捉える視点が重要です。

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