ベトナムは安定的な経済成長を続いており、国民の平均所得が挙がっていく中で食文化に変化が起こってます。砂糖入りの飲料の増加も増えており、Coca-Cola Vietnamの製品や、URC VIETNAMの「C2」やPepsiCo Vietnamの「Sting」といったブランドが有名です。これらの飲料が拡大していく中で問題視されているのが、国民の生活習慣病の増加です。また、その中で肥満と並んで増加しているとされているのが糖尿病です。

糖尿病は約700万人、若年化も

飲料メーカーのウェブサイト

2024年現在、ベトナムでは約700万人が糖尿病を患っていて、増加傾向であるとされています。またその合併症の発生率は最大 55% で、主に心血管、眼、神経、腎臓の合併症が発生しています。その理由は、ほとんどの患者が、治療計画を遵守していない、不適切な食事や運動など、病気に対処するための十分な知識を持っていないためとされています。若年化の傾向もあり、国立小児病院では、10年前は年間10件程度しか受け入れてませんでしたが、近年は糖尿病の新生児も含めて年間数百件の患者が来院しています。

そこで、下記のような議論が起こっています。

ベトナム政府は、砂糖入り飲料に対する10%の特別消費税の導入を検討しています。この政策の目的は、砂糖の過剰摂取による健康リスク、特に肥満や糖尿病といった生活習慣病の増加を抑制することにあります。世界的に、砂糖入り飲料の消費を減らすための措置として、この種の課税が広がっており、ベトナムも同様の道を歩もうとしています。

砂糖入り飲料に「10%特別消費税」か

この税の導入により、砂糖入り飲料の価格が上昇することが予想され、消費者行動に大きな影響を与えると考えられています。政府や保健専門家の中には、この税が消費者をより健康的な選択肢、つまり砂糖不使用の飲料や、天然由来の甘味料を使用した製品へと誘導する効果があると期待しています。特に、若者や都市部の消費者の間で、健康志向が高まっていることが、こうした行動変化を促進する要因になるとされています。

一方で、反対意見も多く存在します。業界団体や一部の経済専門家は、この税が予期しない副作用を引き起こす可能性があると警告しています。例えば、消費者が税のかかっていない路上飲料や自家製の飲料に切り替える可能性が指摘されています。これらの代替品は、正式な規制や監視を受けていないため、衛生面でのリスクが高く、結果的に公衆衛生に悪影響を与える可能性があると懸念されています。また、砂糖入り飲料の売上が減少すれば、これに依存する中小企業や零細業者に深刻な影響を与えることも予想されています。

さらに、特別消費税が導入されても、それが消費者の健康改善に直接結びつくかどうかは不透明です。一部の専門家は、税金の増加が必ずしも消費行動に大きな変化をもたらさない可能性があると指摘しています。価格の上昇だけでは、砂糖入り飲料の消費を完全に抑えることができず、他の教育や啓発活動、健康促進プログラムといった施策との連携が必要であると考えられています。

実際に導入されれば、各社の販売戦略にも影響か

この税制導入に伴う議論は、ベトナムの飲料業界全体に波及効果をもたらす可能性があります。多くの企業がすでに、健康志向の商品開発を進めていますが、この税が導入されれば、企業はさらに低糖または無糖製品の拡充を加速する必要に迫られるでしょう。特に、大手飲料メーカーは砂糖不使用の製品ラインを強化し、マーケティング戦略を見直す動きが出てくると予想されます。

その一方で、中小規模の飲料業者にとっては、こうした変化への適応が難しい場合もあります。生産コストの上昇や、消費者の需要変化に対応するための資源不足が、これらの業者の存続を脅かす可能性があります。特に、地方部で活動する零細業者は、価格競争力を維持することが難しくなり、業界全体に構造的な変革をもたらすことが予想されます。

このように、ベトナム政府による砂糖入り飲料に対する10%の特別消費税の導入は、健康政策としての意図がある一方で、消費者行動や飲料業界全体に複雑な影響を及ぼす可能性があります。短期的には消費者の選択に変化が現れるかもしれませんが、長期的には税制だけでなく、健康教育や政策全体の整合性が問われることになるでしょう。政府と業界の双方が協力して適切な対策を講じることが求められています。

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