エネルギー源の多様化や脱炭素の流れにより、ベトナムでも再生可能エネルギーの普及が進んでいます。再生可能エネルギーで発電した電力を、ベトナム政府が定めた価格でベトナム電力公社が一定期間買い取ることを義務付けたFIT制度の導入をきっかけに、ベトナムでも2019年頃から再生可能エネルギーの開発が進んでいきました。本日は、電力事情も含めてベトナムの再生可能エネルギー市場についてお伝えします。

 

【電力事情】

ジェトロの調査によると、電力消費量においてベトナムはASEANの中でインドネシアに次ぐ第2位であり、ASEAN諸国の電力消費量合計の約23%を占めています。2021年のベトナムの電源別の発電設備容量は、石炭火力(32.5%)、水力(28.3%)、再生可能エネルギー(26.9%)ガス石油火力(11.6%)の構成比となっています。

ベトナム商工省によると、ベトナムは経済成長に伴い2025年まで電力需要が年間8~8.5%増加すると予測されており、旺盛な電力需要が見込まれています。

写真:VN Express

【太陽光発電】

ベトナムは、中部から南部にかけて常夏で日射量が豊富であるため、太陽光の開発に適した地域が多く開発ポテンシャルは高いです。日本の資源エネルギー庁の発表によると、日本の太陽光発電設備容量は世界第3位(72GW)ですが、ベトナムも世界8位(16GW)とTOP10入りを果たしています。

ベトナムは2019年に太陽光発電の開発が進みました。ベトナム政府が定めた電力買取価格(9.35セント)の期限が2019年6月末に到来するため、駆け込みで2019年4月~6月の3ヶ月間にこれまで開発されていた太陽光発電の約400倍が接続されました。

その後、ベトナム政府は太陽光発電のFIT制度を地上置き、屋根置き、水上置きの3つのタイプに分類し、2020年12月末の運転開始を期限にFIT制度を改定しました。このうち、屋根置きは8.38セントと、水上設置や地上設置と比べて比較的高い価格が維持されたことから、屋根置き太陽光発電の投資が進みました。私が働いていた工業団地でも、同時期に屋根置きの太陽光が設置されました。

【風力発電】

先述の通り、2021年のベトナムの電源構成に占める再生可能エネルギーの割合は約27%となっていますが、風力発電の設備容量が前年から約8倍に増加しています。ベトナムは縦長の国土に多くの山岳部や長い海岸線を持っているため、風況は良好です。ベトナム商工省によると、風力発電については2030年までに6,000MW(2030年の発電容量の約5%)を導入する方針であり、日系企業も風力発電の建設を進めています。

風力発電(VN EXPRESS)
写真:VN Express
写真:Vietnamplus

 

【バイオマス発電】

ベトナムは世界有数の林業・農業国であり、カシューナッツ輸出量世界1位、コーヒー輸出量世界2位、米輸出量世界3位と世界の食を支えている国の一つです。その副産物として得られる稲わら、もみ殻、カシューナッツ殻、コーヒー殻など多様なバイオマス燃料がベトナム国内で発生しています。

また、バイオマス発電の発展は、エネルギー需要への対応のみならず、バイオマス燃料を保有する農村地区の新たな収益源となり、地域の雇用促進や所得向上に繋がる可能性も期待されています。以前メコンデルタ地域のココナッツジュース製造工場を見学した時、ものすごい量のココナッツ殻が処分されていましたが、こういったココナッツ殻もバイオマス燃料としての活用が期待されており、日系企業や自治体も可能性を調査しているようです。

【停電】

ちょっと話が逸れますが、ベトナムはまだまだ電力事情は弱く、スコールなど熱帯特有の気象要因も相まって今でも停電は頻発しています。製造業の方にとって停電は死活問題かと思いますが、私が過去工業団地で働いていた時は、1年間で10回以上停電がありました。停電の一番の理由は落雷ですが、中にはヘビが電線を噛んだなど、電力会社の発表を疑いたくなるものもあります、、、笑

停電時間は、10秒程度の瞬間停電から長ければ2時間程度になることもあります。自社工場の企業はバックアップ電力を確保している企業が多いですが、レンタル工場の入居企業はバックアップ電力を確保していない企業がほとんどでした。停電で機械が急停止すると、故障や事故に繋がるため、雷が鳴り始めると機械をいったん停止させる、などの対策をしている企業もありました。

 

再生可能エネルギーの活用は世界的なテーマであり、またベトナム国内の旺盛な電力需要をカバーするため、今後も拡大が期待されています。MAIインターナショナルでは、この様な成長分野の市場調査や戦略策定が可能です。ぜひ、お気軽にお問合せ頂ければ幸いです。