ベトナムは世界有数のコーヒー生産国として有名ですが、ロブスタ種を使用した伝統的なベトナムコーヒーを中心に、カフェ文化も深く根付いています。
これは19世紀半ば、フランスに統治されていた時代に持ち込まれたとされており、現在は全国に大小様々なカフェがあり、個人経営店を含めると、およそ20,000店舗存在していると考えられています。

Highlands COFFEE 公式Facebookより

芳醇なカフェ文化、業態も様々

日常的に、様々な世代で利用されています。
その目的は、飲食の場、気分転換目的、友人と過ごす憩いの場が主ですが、それだけではありません。
都市部の若いビジネスパーソンはフレックス勤務を好む傾向があり、カフェを仕事場のように利用しています。
また、地方から都市部に進学してきた大学生は、親族や友人とアパートで共同生活をしていることが多いため、週末は自室よりもカフェで勉強をすることが一般的です。
このような理由で、多くのカフェは早朝から閉店まで、大変混雑しております。
集客争いも激しく、店舗側も割引セールや、Instagram、TiktokなどのSNSを活用し、工夫して集客を行っています。

また業態の細分化も始まっており、Wi-Fiやプリンターを完備したシェアオフィス式カフェ、書籍を取り揃えたブックカフェ、映画上映を行うシネマカフェ、猫カフェ、シーシャ(水たばこ)カフェ、スタンド式など様々な業態が存在します。
郊外ではロードサイドに“ハンモックカフェ”と呼ばれる、長距離ドライバーの休憩場所のような、ベトナムならではのカフェ業態も存在し、根強い人気があります。

一方の都市部では自家焙煎を行うロースタリー式のカフェも登場しています。
これらの多くは販売スペースを持っており、飲食だけでなく、ライフスタイルショップ・セレクトショップとして利用されています。

増えるコーヒーチェーン、店舗で製品販売も

これまでは個人経営の小規模店舗がほとんどでしたが、昨今はコーヒーチェーンが増加しています。

最も店舗数が多いのは、「Highlands COFFEE」で300店舗。これは米国シアトル育ちのベトナム人が、ベトナムに帰国して立ち上げたコーヒーチェーンです。
米国式チェーンストア構築を参考にしたとされており、店舗拡大に成功し、現在はフィリピン発の外食大手ジョリビーグループによって運営されています。
また、同グループは、東南アジア全体で展開する「The Coffee Bean & Tea Leaf」の親会社であり、ベトナムには15店舗が展開しています。

老舗チェーンとして知られる「Trung Nguyen Coffee」も93店舗を構えています。
しかしながら、2015年にオーナー夫妻の泥沼裁判がスキャンダルとして国内で大きく報じられてしまい、店舗拡大に陰りが出てきています。

また、洗練されたデザインで人気の「The Coffee House」が76店舗を構えています。
緑のトレードマークが目印で、製茶企業として長い歴史を持つ「Phuc Long」は76店舗、80年代の共産主義イメージのデザインを打ち出して人気の新興チェーン「Cong Ca Phe」は56店舗出店しており韓国とマレーシアにも店舗があります。
この他に、「KATINAT」や「CHEESE COFFEE」「AHA COFFEE」「Passio」などは、洗練されたイメージで都市部の若者に人気です。

また、外資ではグローバル大手の「Starbucks」が2013年に出店しており、現在までに77店舗を構えています。
タイ大手の「CAFE AMAZON」も2019年に進出しました。

店舗増加の要因のひとつとして、カフェは気軽に起業しやすい業態として知られ、オフィスワーカーが副業として小規模店舗を経営することがあります。
このため、個人経営のカフェ事業者に向け、店舗向け食材や店舗へのキッチンアイテムや食器を供給する企業も増加しています。

The Coffee House 公式Facebookより

大きく伸びるコーヒー消費量、経済発展が要因か

一方で、コーヒー消費量の推移ですが、興味深いことに、コーヒー生産が盛んでカフェ文化があるものの、国内のコーヒー消費量はまだ限定的で、世界有数の生産地でありながら、ベトナムはまだコーヒーの自国消費が少ない国であるといえます。

一人当たりの年間コーヒー消費量は、2015年1.44kg、2020年に1.64kgと増加しつつあります。
日本の3.40kg、EU平均の5.27kg、米国の4.85kgと比較して低い数字であるものの、2005年と比較すると、なんと381%と大きく伸びていることがわかります。

これは、Highlands Coffee、Starbucksをはじめ、オシャレなカフェがホーチミンやハノイのような都市を中心に増加していること、エスプレッソを主体としたシアトルコーヒーなど選択肢も増えてアラビカ種の需要と消費量が増大していることが上げられます。

同じく世界有数のコーヒー生産国であるインドネシアやブラジルも、経済発展に伴いコーヒーの消費量が拡大している事から、今後はベトナムでもコーヒーの国内消費が拡大して行く事が予測されます。

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