この記事のポイント
- 新店はハノイのトランティエン通り24番地に立地
- 文化接続モデル、店舗に込められた世界観
- 「24」は1880年パリの24番地に由来、物語化が鍵
エルメスが大劇場近くの歴史的街区を選んだ理由
ベトナムでも、ラグジュアリーブランドの旗艦店・路面店の出店が着実に進んでいます。今回ハノイで話題になっているのが、エルメスによる新店舗計画です。ベトナムメディアの報道によると、フランスの高級ブランド・エルメスは、ハノイのトランティエン通り24番地(24 Trang Tien, Hoan Kiem)で新店を準備しており、2026年1月ごろのオープンが予定されています。
新店舗は、ハノイ大劇場(オペラハウス)にほど近い歴史的街区に位置し、近隣には高級ブランドの旗艦店や高級ショッピングセンターが集積しています。トランティエン通りは、長年にわたり首都の文化・商業の中心として機能してきたエリアであり、エルメス側も「ブランドイメージを遺産性のある空間と結び付ける意図がある」とコメントしています。
ハノイ出店が示す「高級ブランド×立地×文化接続」モデル
ベトナムにおけるエルメスの正規販売は、Openasiaグループ傘下のCông ty Quốc tế Tam Sơn(タムソン社)が担っており、今回の新店も同社がオペレーションを担当する枠組みです。
エルメスが選んだ24 Trang Tienという場所は、「歴史ある建築が並ぶ中心部」「オペラハウスや文化施設への動線」「高級ブランドが集積する街区」という3要素が重なっています。報道でも、ブランド側が「生活文化と長年の商業活動が根付いた通り」「国際ブランドが参入・拡大時に選ぶ区域」である点を重視していることが示されています。
ハノイの掲示板アートと「24」のブランド史:エルメスが強調する象徴の作り方
ここから読み取れるのは、高級領域では単に「人通りが多い場所に出す」という発想ではなく、ブランドの世界観と街区のストーリーを重ねる設計が重要だということです。ハノイのなかで既にラグジュアリー・イメージが成立している街区に自らを置くことで、「高級ブランドカテゴリーの一員である」という認知を一気に獲得する一方、周辺テナントとの違いをどう設計するかが必須になります。
企業にとっては、トランティエン通りのように「ラグジュアリーブランドが集積するエリア」がどこかを特定し、その街区の来街者プロファイル・家賃水準・ブランドミックスを把握したうえで、自社の価格帯・世界観と整合するかを検証するプロセスが不可欠です。
ハノイとホーチミンでは、モダントレード(近代的小売)の集中度合いがもともと高く、スーパーやショッピングセンターの多くがこの二大都市に立地しています。 そのなかでラグジュアリーが成立している街区はさらに限られるため、「国全体」ではなく「都市×街区単位」での戦略設計が現実的といえます。
今回注目されているのが、店舗前面のhoarding board(工事用囲い)をアートとして提示している点です。新店の外観には、ベトナム人アーティスト・Tuýp Trần氏との協業によるアートワークが掲出され、エルメスの象徴的なモチーフに加え、陶器のバルコニー、植木鉢、「還剣伝説(ホアンキエム湖の剣を返す物語)」に着想を得たモチーフなど、ハノイ文化を想起させる要素が組み合わされています。
ここで重要なのは、ローカル文化を単なる「装飾」ではなく、ブランドの象徴体系に組み込まれた要素として設計している点です。外壁に貼るグラフィックを、工事期間中から「作品」として認識させることで、オープン前から街行く人に新店の世界観を刷り込んでいます。
番地番号24の意味「土地のディテール」と「ブランドの象徴」
さらに、住所番号に含まれる「24」は、1880年にシャルル=エミール・エルメスがパリの24 Faubourg Saint-Honoréに工房を移した史実と結び付けて語られています。この住所は、その後1世紀以上にわたるブランドの成長とクラフツマンシップを象徴する拠点となり、エルメスにとって「24」という数字自体がコアバリューを表すサインになっています。
ハノイの24 Trang Tienに出店し、hoardingアートを通じてハノイ文化と「24」のストーリーを同じ画面上で編集することで、「土地のディテール」と「ブランドの象徴」を一体化させ、記憶に残るサインとして定着させる試みだと捉えられます。
このように、ハイクラスなブランドの市場戦略は、日本企業にとっても参考になるかもしれません。
※本記事は各種報道・公開情報をもとにした一般的な解説であり、特定ブランドへの投資・出店を推奨するものではありません。店舗情報や規制・商業条件は変更される可能性があるため、最新の状況は必ずブランド公式情報や関係当局・専門家にご確認ください。
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