過少申告で受給額が減る…ベトナム社会保険のトラブル

この記事のポイント

  • BHXH保険料は賃金の32%、上限46.8百万ドン
  • 調査で43%が実収入より低い基準でBHXH加入と判明

ホーチミン市で表面化したBHXH「過少申告」問題

ベトナムでは、国家が管理する社会保険制度(BHXH)が「福利厚生の中で重視される項目」です。一方で、企業がコスト圧力から給与を分割し、BHXHの基準給与を実収入より低く設定する“過少申告”がトラブルの火種になっています。TP.HCMのある運輸企業では、月収3,000万ドンの契約にもかかわらず、BHXHの算定賃金が実収入ではなく、手当等に「小分け」されて低く設定されていたと報じられています。本人が実収入での加入を申し出ても、「共通の規定」として認められなかった、という証言もあります。

なぜ“受給のタイミング”で炎上しやすいのか

厄介なのは、問題が日常では見えにくく、失業給付・疾病給付・産休給付など「制度を使う局面」で一気に不利益として現れる点です。受給額が想定より低いと、従業員の不満→申立て→当局照会、という流れになりやすく、労使関係と法令対応が同時に燃えやすくなります。

過少申告の典型パターン:給与分割・手当運用・複数テーブル

実務で多いのは、給与を複数項目に分け、雇用契約に書く部分(例:基本給)だけをBHXHの基準にし、残りを手当・賞与・その他名目で支払うやり方です。制度としての設計自体は一律に否定できませんが、「実態との整合」が崩れると回避と見なされやすくなります。

3P(P1/P2/P3)は“設計”より“運用”が問われる

3Pで整理する場合、P1を契約給与(BHXH基準)、P2を能力・資格などの手当、P3を成果連動の支給に切る考え方が紹介されています。ただし当局目線では、次のような状態がそろうと「回避の兆候」として見られやすいとされています。

  • 契約給与(P1)が実収入に比べて不自然に低い
  • 手当・賞与(P2/P3)が定額で継続支給され、実質P1の代替になっている
  • BHXH用・税務用・社内支給用など複数の給与表が並存している

結論としては、P1〜P3の区分が「説明可能」か、規程と支給実態が「一致」しているかが分岐点になります。

企業側のリスク:追徴・罰則だけでなく採用競争力も落ちる

賃金を分割してBHXH基準給与を低く見せる運用は、定期検査や税データとの突合で是正・追徴・行政処分を求められ得ます。実際に、申立てや点検を起点に、TP.HCMで1,350人分の不足納付と追徴2.6十億ドン超が記録されたとされています。

さらに採用・定着の面でも、BHXHは「企業福利厚生の上位」として認識されやすく、基準給与が不自然に低いと、提示条件への不信や離職の引き金になり得ます。特に若年層は手取りを重視しがち、という見方もありますが、だからこそ“受給時の不利益”まで含めた説明ができないと、後で大きな反動が来ます。

関連して、制度運用の透明性が問われる局面は増えています。BHXH領域でも摘発・捜査が報じられることがあり、コンプライアンス上の温度感は上がっています(参考:BHXH元局長が7億ドン収賄、金銭は「企業から贈り物」)。

当局が見やすいチェックポイント

過少申告は、単に「項目を分けた」だけで決まるというより、データ整合でバレます。具体的には、税務・会計・社内支給の間で数字が割れている、定期支給なのに手当扱いになっている、などです。給与テーブルの作り方は、後から一括追徴になり得る“負債”にもなるので、早めの棚卸しが安全です。

なお、採用市場では「基本給(基準となる給与)」の見せ方自体が変化しています。例えば行政が基本給を倍率で示す制度案も出ており、候補者が条件を比較しやすくなっています。給与の“見せ方”と“制度の説明”はセットで再設計しておくと安全です(参考:ハノイの高度人材支援(最大1,000倍)を読み解く)。

BHXHの過少申告は、追徴や罰則だけの問題ではなく、採用・定着・雇用ブランドに直撃します。特に製造業では賃上げやボーナスが採用競争力に直結しやすく、福利厚生の説明が弱いと不利になりやすいです(参考:賃上げ・採用3,000人が示す製造業の労務競争)。


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引用元:vnexpress.net(原記事はMAI記事末尾に記載)

※本記事は公開時点の情報をもとにした一般的な解説です。最新の法令・通達・解釈は必ず関係当局や専門家にご確認ください。