この記事のポイント
- ラムドン省で銀行員が顧客信頼悪用し80億ドン占有
- 複数の被害者から借入し、計80億ドンを横領とされる
- 80億ドン級不正を踏まえ日系は承認分離の徹底が要る
ベトナム中南部のラムドン省で、商業銀行の従業員が顧客の信頼を利用し、個人的な借入という形で複数の人から資金を受け取ったうえで、そのまま占有した疑いで立件されたと報じられています。
報道ベースでは、被害者は複数にのぼり、被害総額はおよそ80億ドン(数千万円規模)とされています。
■報道ベースで分かっていること
現時点で公表されている情報は限定的ですが、少なくとも以下のような点が示されています。
加害者とされる人物は銀行の従業員であり、日常的に顧客と接点を持つ立場にあった。
顧客からの資金は「借入」や「紹介案件」といった形式で集められ、銀行の商品ではなく本人個人の取引として扱われていた可能性が高い。
返済が滞り始めたことで被害が顕在化し、被害者側が当局に通報したことで事件化したとみられる。
つまり、銀行の看板や担当者としての立場を背景に「安心ですよ」と説明しつつ、実態は個人の資金調達に近い行為だった可能性があります。
この構図は、企業の駐在員や現地スタッフが「付き合いで担当者にお金を貸してしまう」ケースとも重なり得る点で、他人事とは言えません。
■なぜ「銀行員個人への貸し」が問題になるのか
銀行員個人への貸しや、担当者からの「利回りの良い案件があります」といった持ちかけは、ベトナムに限らず多くの新興国市場で時折見られます。問題は次の2点です。
◆相手は銀行ではなく、あくまで個人
契約書や証憑が整っていない場合、「銀行の担当者から紹介された=銀行が保証している」という誤解が生じやすく、トラブル時に法的な立場が非常に弱くなります。
◆職務上の地位を利用した“信頼の濫用”
口座開設や融資、日常の入出金で良好な関係を築いていると、「この人なら大丈夫だろう」と心理的なハードルが下がります。不正の多くは、この“ちょっとした信頼”の隙間から始まります。
今回のラムドン省の事例は、あくまで一地方での事件に過ぎませんが、「銀行員だから安心」という前提を疑うきっかけとして捉えることができます。
■ラムドン省の銀行員80億ドン横領が示す現地取引リスク
前述の通り、本件の核心は「銀行員が顧客の信頼を悪用し、複数の個人から資金を借り受けたうえで占有した」とされる点にあります。
これは、銀行業務に限らず、ベトナムでの BtoB・BtoC 取引全般に共通する「担当者依存」と「情報の非対称性」の問題を象徴しています。
■担当者への過度な信頼と口頭合意のリスク
多くの企業がベトナムで取引を行う際、次のような運用に陥りがちです。
「いつも銀行窓口でお世話になっている担当者だから」という理由で、個人的な相談や資金授受に応じてしまう。
口頭での約束や、Zalo・Facebook メッセンジャーのやり取りだけで重要な条件を決めてしまう。
契約相手が会社なのか個人なのか、どちらの名義で貸し借りしているのかが曖昧なまま進めてしまう。
こうした運用だと、トラブル発生時に
「会社としての契約なのか」「単なる個人間トラブルなのか」
の線引きが曖昧になり、回収・法的対応が極めて難しくなります。
■他分野の不正事件と共通する構図
今回の銀行員による横領事件は金融の話ですが、「信頼を装う」「有名ブランドや立場を盾にする」という意味では、他分野の不正事件とも共通点があります。
分野は異なっても、「肩書きやブランドを利用して信頼を獲得し、不透明な商品・サービス・投資案件を売り込む」というパターンは共通しています。
銀行員による80億ドン横領も、その延長線上にあると考えると、企業としては「どの接点で同じ構図が起こり得るか」を洗い出しておく必要があります。
■現地口座の承認分離と不正抑止:企業が取れる具体策
本件は銀行員による個人不正の一例に過ぎませんが、「現地口座の管理」や「担当者との付き合い方」を見直すきっかけとしては非常に分かりやすい事案です。
これらは国外の本社では当たり前の仕組みでも、ベトナム子会社や小規模駐在事務所では「人が少ないから」という理由で後回しになりがちです。ラムドン省の事件をきっかけに、ベトナム拠点の体制を棚卸ししてみる価値があります。
今回はベトナム国内の不正発覚事件を紹介いたしました。
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