テト賞与700×10億ドン支出、ドンナイ靴工場4万2000人の賃金・採用を追う

この記事のポイント

– ドンナイ省のChangshin Vietnamがテト賞与に約7,000億ドンを計上、最大200%(基本給2か月分)まで支給
– 2025年の最低賃金引き上げを受け、生産工の月給は約1,100万ドン、勤続層は1,800万〜2,000万ドン、採用提示は8.5〜9百万ドン(残業別)に上昇
– 今年6,000人を追加採用し従業員は4万2,000人規模に拡大、同省の製靴・縫製業全体で人材獲得競争が激化

Changshin Vietnamがドンナイ省でテト賞与700×10億ドン、2025年の支給基準と賃金水準

ドンナイ省タインフー・タンチエウ街区の工業団地にあるChangshin Vietnamは、100%韓国資本で輸出向けの靴を生産する大規模工場です。労働組合委員長の説明によると、2025年のテト賞与の総支出額は約7,000億ドンとされており、南部の中でも見劣りしない水準と言えます。

賞与の算定ロジックは団体協約に明記されており、勤続1年で基本給1か月分を支給、以降は毎年5%ずつ加算し、上限200%(基本給2か月分相当)という仕組みです。基本給が上がるほど賞与の絶対額も連動して増えるため、「最低賃金+年功的加算」の二重構造で人件費が膨らみやすい設計になっています。

賃金水準については、生産工(ライン工)の平均月給は約1,100万ドン、勤続年数が長い層では1,800万〜2,000万ドンとされています。一方で、新規採用者に対しては月収8.5〜9百万ドン(残業代を除く)を提示しており、「残業込みでかろうじて相場に追いつく」のではなく、残業抜きでも一定水準を確保した待遇を提示している点が特徴です。

Changshinは2025年に約6,000人を追加採用し、従業員総数は約4万2,000人規模となりました。同省内では製靴・縫製・部材加工など同一労働市場を取り合う企業が多いため、この規模の採用強化は周辺企業の人員確保にも直接影響します。

日本企業への影響: ドンナイ省の製靴・縫製で「テト賞与と最低賃金引き上げ」が調達と人材確保に与える示唆

今回のテト賞与は、最低賃金の引き上げを受けて基本給が調整されたうえで、勤続年数に応じた年功的な賃金上昇が上乗せされる形になっています。その結果、多くの勤続層では「前年より実際の受取額が増える」構造となり、企業の賞与原資は単純な最低賃金対応以上に膨らむ可能性があります。

日本企業がドンナイ省の製靴・縫製工場をサプライヤーとして活用する場合、「最低賃金を守っているか」だけでは不十分で、①勤続年数に応じた賃金テーブル、②賞与の算定ロジック(基礎賃金・勤続年数・在籍要件など)、③団体協約への明文化状況まで確認する必要があります。これらが明確になっていないと、追加の賞与要求や労使トラブルが発生した際に、突然コストが上振れするリスクがあります。

また、受注増加を背景に月平均400人のペースで新規採用を続ける企業がある一方で、周辺企業も似たような採用攻勢をかけているため、同じ工業団地内で労働力の奪い合いが起こりやすい状況です。発注側としては、単なる「生産能力(ライン数)」だけでなく、サプライヤーの採用・定着状況や離職率をヒアリングし、繁忙期に予定どおり人員が確保できるかをセットで確認しておくことが重要になります。

賃金・テト賞与の状況について、当局は各省に対し、工業団地・輸出加工区の管理機関と連携して2026年テトに向けた支給状況を把握し、12月25日までに報告するよう求めています。こうした行政報告が求められている背景には、「省単位での賃金・賞与相場の見える化」を進めたい意図もあると考えられ、日本企業としても中長期的な賃金カーブ・人件費のトレンドを把握するうえで参考になります。

TKG Taekwang Vinaとドンフー・クオンのテト賞与比較、ドンナイ省の工業団地59カ所・2万1700haとロンタイン空港の集積効果

同じドンナイ省内では、Changshin以外にも複数企業がテト賞与の支給方針を公表しています。たとえば、TKG Taekwang Vinaは勤務期間や入社時期に応じて1.15〜1.5か月分の賞与を予定しており、水準としては昨年と同程度とされています。一方、縫製企業のDong Phu Cuongは従業員約2,500人に対し、「1か月分の給与+奨励金」を支給し、生産工の平均受取額は約1,450万ドンと、前年より20%以上増加しています。

この3社を並べて見ると、①基本給1か月+α型(Dong Phu Cuong)、②1.15〜1.5か月分の係数型(Taekwang)、③勤続年数に応じて最大200%まで積み上げる年功型(Changshin)と、同じドンナイ省でも設計思想が異なることが分かります。調達・委託生産の観点では、「賞与があるかどうか」ではなく、「どのようなロジックで決まるか」「最低賃金改定の影響をどこまで受けるか」を聞き取ることで、将来のコスト増加リスクをより精緻に把握できます。

立地面では、ドンナイ省は工業団地を81カ所計画し、そのうち59カ所が稼働済みで、総面積は約2万1,700haとされています。東南部の物流・製造の玄関口として、ロンタイン空港の稼働準備に加え、港湾・高速道路・道路・鉄道といったインフラ整備が並行して進んでおります。

一方で、メコンデルタのベンチェ省など、賃金・地価が相対的に低い省へと縫製・ワイヤーハーネスなど人手を要する業種が南下する動きも見られます。

日本企業の実務対策: テト賞与設計・最低賃金改定・採用計画をドンナイ省の相場(11×100万ドン、最大200%)に合わせて再点検

1. **テト賞与のロジックを「協約レベル」で可視化する**
Changshinのように、勤続1年で1か月分を起点とし、毎年5%ずつ加算して上限200%とする仕組みは、団体協約に明記されています。日系企業も「賞与支給の有無」だけでなく、勤続年数・入社タイミング・在籍条件などの計算ロジックを賃金規程や協約に落とし込み、現場が説明できる状態にしておくことが重要です。これは、将来の改定交渉やコストシミュレーションを行う際の前提情報にもなります。

2. **最低賃金改定と年功要素が賞与原資にどう波及するかを数値で押さえる**
賞与の基礎が「基本給」寄りであればあるほど、最低賃金引き上げと年功的な昇給が賞与原資にダブルで効いてきます。賃金テーブル(等級・勤続年数)と賞与係数を並べて見直し、どのゾーンの従業員で増分が大きくなるかを事前に試算しておくことで、「想定外の人件費増」を抑えやすくなります。

3. **採用条件は「残業抜きで成立する水準」と「繁忙期の上乗せ」を分けて設計する**
Changshinでは、月収8.5〜9百万ドン(残業別)という提示がなされており、ベース賃金自体が一定水準まで引き上がっています。同省の相場(最低賃金帯+各種手当)を踏まえ、「残業がゼロでも人が集まる水準」と「繁忙期に残業で補う水準」を分けて設計することで、採用と収益確保のバランスを取りやすくなります。

4. **サプライヤー管理では「賞与の根拠」と「人員確保計画」をセットでヒアリングする**
ドンナイ省では、1.15〜1.5か月分、1か月+奨励金、勤続に応じて最大200%といった複数の運用例があります。購買側としては、①賞与の根拠が労働協約にあるかどうか、②最低賃金改定後の基本給調整がどこまで波及しているか、③受注増に見合った採用・教育計画があるか、といった項目を標準的なチェックリストに組み込むことが望ましいでしょう。

5. **省当局への報告義務を踏まえた社内説明資料の整備**
内務省の要請により、各省は賃金・テト賞与(2026年)の状況をとりまとめ、12月25日までに報告することが求められています。相場情報が省単位で集約される局面に備え、日本企業側でも「ドンナイ省の賃金・賞与相場」と「自社・主要サプライヤーのポジション」を比較できる社内資料を準備しておくと、グローバル本社への説明がスムーズになります。

※本記事は公開時点の情報をもとにした一般的な解説です。最新の法令・通達・解釈は必ず関係当局や専門家にご確認ください。

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