ベトナム中部北部沿海部に位置するタインホア省は、近年、製造・輸出・外資(FDI)誘致の観点から「成長エンジン」として国内外から注目を集めています。2025年には、産業構造の転換と外資・国内企業投資の呼び込みに向けて積極的な政策運営が行われており、月次データでも「多くの困難を抱えつつも成長を継続」している姿が確認されています。
本稿では、タインホア省の経済動向・FDI動向・財政収入構造・人口・インフラ・地域ポテンシャルを整理し、「なぜ今注目されているか」「日本企業にとっての示唆」をご紹介いたします。
経済状況・成長軌道
タインホア省は、まさに成長軌道にある地域と言えます。
- 2025年10月の月次報告では、農林漁業・工業・サービスのすべての分野で前年同月比の増加が確認されており、18品目の主力工業製品のうち16品目が増加傾向です。
- 9か月累計では GRDP(地域総生産)が+8.19%という成長率を記録しており、中部北部地域では先行している省の一つです。
このように、タインホア省は「成長継続・製造・輸出・サービスの三本柱」という流れを実際に捉えつつあるフェーズにあります。
外資(FDI)・投資誘致の動き
タインホア省の投資環境改善と誘致実績も目を引きます。
- 過去の報告によると、同省には有効なFDIプロジェクト数173件、登録資本額約152億米ドルに達するというものがあります。
- また、2025年前半だけでも、投資誘致件数・金額ともに前年同期比で増加傾向にあり、外国・国内双方の資本が「付加価値型・グローバルチェーン対応型製造業」を対象に呼び込まれつつあります。
こうした数値から、タインホア省は「外国・国内双方からの投資魅力度が上がってきている」地域であり、製造・輸出・国際サプライチェーン対応の拠点として、注目度が高まっていると言えます。
財政収入構造:FDI企業が主導
タインホア省の財政収入(国家予算/地方収入)に関して、特に興味深い構造変化が確認されています。
- 最新報告によれば、同省の国庫収入において、FDI企業からの収入が収入構成比の 32.1% を占めており、次いで土地使用料等が20.9%、国営・非国営商工業から19.4%という構成となっています。
- 特に、FDI企業としては「Nghi Sơn製油・石化コンプレックス」が1,830億ドン超の収入を確保しており、同省全体の収入構造においてFDI企業の存在感が非常に大きいことが明らかです。
このように、タインホア省においては「収入面でもFDI企業が中核的役割を果たしている」ことが明確です。日本企業にとっては「立地地域として優れているだけでなく、省として外資企業を主要収入源とする姿勢である」という点も安心材料となるでしょう。
人口・地域ポテンシャル
立地・人口・労働力の面でも、タインホア省は魅力的な条件を備えつつあります。
- 最新データでは、2025年7月時点で人口が 約 4,324,783人 に達しており、国内でも上位規模の地域です。
- この規模の人口は「製造・輸出向けの労働供給基盤」という観点からも一定の量を満たしており、さらに物流・海岸アクセス・工業団地立地という立地ポテンシャルも加わることで、立地戦略としての優位性が出てきています。
- また、地域が「輸出・観光・サービス・製造」という複数産業の交差点になりつつあるため、将来的には産業構造の多様化という観点でも成長余地があります。
このように、人口・立地・インフラが揃いつつあるため、立地戦略を検討する上で「選択肢として有力な地域」であることは明確と言えます。
インフラ・海路関連の具体的数字
立地優位性を補強するため、インフラ・海路関連の数字も加えます。
- 同省では海港インフラ整備計画が進んでおり、2030年までに 2兆1,900億ドン(約8億4千万米ドル) を投資し、港湾網「最大24港、67~65バース(桟橋)、11,000~13,500メートルの岸壁長」整備を目指しています。
- そのうち、深水港である「Nghi Sơn Port(ギーソン港)」は、年間貨物処理能力を 7,165〜8,615万トン に引き上げる目標となっています。
- 現実には、2023年には同港を通じた貨物流通量の目標「約4,770万トン」に挑戦しており、コンテナ輸送路の開設・物流支援策も進められています。
- また、同港の年間寄与収入は約 180 兆ドン(VND18 trillion/約6.93億米ドル) にのぼり、県予算収入における重要な収入源となっています。
これらの数字は、タインホア省の「港湾・海運アクセス」という立地条件が、今後の製造・輸出・物流拠点としての魅力を裏付ける根拠となっています。
今、特に注目されているポイント
タインホア省が今、特に注目を集めているポイントを整理します。
- 製造・輸出チェーンの移転・拡大先としての位置付け:世界的なサプライチェーン再編、東南アジア域内分散の潮流の中で、タインホア省は中国からの生産移転やASEAN域内展開先として候補になりつつあります。
- 工業団地・用地確保とインフラ整備:港湾・海運インフラ(例えばNghi Sơn港)を含む物流ネットワーク整備が進んでおり、企業立地環境の改善が図られています。
- 投資環境改善・行政支援の強化:企業数の増加、投資許可件数の増加、税収伸び率の改善など、ビジネス環境の底上げが報じられており、投資家マインド向上に寄与しています。
- 財政収入構造がFDI・海運収入依存型に転換:省予算収入において、FDI企業・港湾収入が重要な位置を占めており、これは省政府として「立地・投資・輸出」を戦略的に位置づけている証拠とも言えます。
- 地域ポテンシャルの活用開始:海岸線沿いや港湾アクセスなど立地アドバンテージを備えており、これを活かした「輸出加工・海運物流拠点」という戦略が現実味を帯びています。
- 目標成長の高さ・成長意欲の明示:GRDP成長目標として約11%という高めの数値が掲げられており、地域として「成長エンジンになる」という目線が鮮明です。
日本企業・日本投資家にとっての示唆
日本の企業、特に製造業(部品・電子・機械加工)を対象とする企業にとって、タインホア省は次のような観点で検討価値があります。
- 製造・輸出を前提とする拠点として、立地としての魅力が上がってきています。
- 進出検討にあたっては、以下を整理・確認することをお勧めします:
- 工業団地・用地の空き状況・土地使用許可・インフラ状況(電力・水・物流アクセス)
- 労働力のスキル・賃金水準・離職率・教育訓練支援の有無
- 投資インセンティブ(税制優遇・土地賃貸料・輸出支援)や行政サポート体制
- サプライチェーン(部品供給・物流アクセス・近隣産業集積)や周辺企業との連携可能性
- 海運・物流インフラ(港湾アクセス、コンテナ航路、通関支援)を含めた物流戦略
- 国内外景況・為替・原材料価格・物流制約など外部リスクへの備え
- 特に「輸出向け製造」「部品加工」「環境配慮型・高付加価値製造」という位置付けであれば、今後の成長余地は大きいと考えられます。
- また、財政収入構造が「外資企業・港湾収入」に依存しているという点から、外国企業にとっては「省政府が外資・輸出企業を重要な存在として位置づけており、誘致・支援姿勢が強い」とも読み取れ、心理的な安心材料にもなります。
総括
タインホア省は、2025年10月時点で「成長軌道上にある経済地域」として明確に浮上しており、製造・輸出・FDI誘致という観点から、ベトナム国内でも高いポテンシャルを有しています。さらに、港湾・海運インフラという「物流・立地の強み」が具体的な数字で裏付けられているため、立地戦略としての説得力が一段と高まっています。人口・労働力・インフラの三点が揃いつつあるため、日本企業を含む国内外の投資家からの注目度が高まっています。一方で、インフラ整備の遅延・人材育成・プロジェクトの実効性・物流・通関手続き・外部リスク対応といった課題も引き続き存在しており、進出検討時にはこれらをきちんと精査する必要があります。
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