投稿者: obika

  • ピックルボール用品が半年で約29億円規模に、急成長するスポーツ消費

    ピックルボール用品が半年で約29億円規模に、急成長するスポーツ消費

    ベトナム市場を調査するうえで、興味深いニュースがありましたのでご紹介します。

    少し前の記事になりますが、2025年8月8日付のベトナムメディア「Dân trí」に、ピックルボール関連用品の販売額が2025年上半期だけで5,106億ドンに達したというニュースが掲載されていました。

    ピックルボールは、テニスやバドミントン、卓球の要素を組み合わせたラケットスポーツです。ベトナムでは2024年から2025年にかけて大きなブームとなり、都市部を中心にコートや関連商品の需要が拡大しました。

    現在は2026年10月ですので、このニュースは1年以上前のものです。ただ、短期間で新しいスポーツが普及し、大きな消費市場を生み出したという点は、ベトナムの消費者動向を考えるうえで参考になる事例だと思います。

    2025年、ベトナムでピックルボール用品の販売額が急拡大

    2025年8月8日付のDân tríの記事によると、ECデータ分析プラットフォーム「Metric.vn」の集計で、2025年上半期のベトナムにおけるピックルボール関連用品の販売額は5,106億ドンに達しました。

    これは前年同期比で1,282%増という非常に高い成長率です。さらに、2025年第1四半期だけで2,287億ドンを記録し、2024年通年の2,719億ドンに迫る規模となっていました。

    調査対象となったのは、Shopee、TikTok Shop、Lazada、Tikiの主要ECプラットフォーム4社です。これらのプラットフォームでは、2025年上半期に約240万点のピックルボール関連商品が販売されたと報じられています。

    • 2025年上半期のEC販売額:5,106億ドン
    • 前年同期比:1,282%増
    • 2025年上半期の販売数量:約240万点
    • 2025年第1四半期の販売額:2,287億ドン
    • 2024年通年の販売額:2,719億ドン

    ※いずれも2025年8月時点で報じられた過去の販売実績です。また、主要ECプラットフォームの集計値であり、実店舗を含むベトナム市場全体の売上ではありません。

    出典:Dân trí「Người Việt chi hơn 510 tỷ đồng mua đồ pickleball trong nửa năm?」(2025年8月8日)

    どのようなピックルボール用品が購入されていたのか?

    当時の報道では、ピックルボール専用シューズやラケットが売れ筋商品として紹介されていました。新しく競技を始める人が増えたことで、競技に必要な基本的な用品の購入が進んでいたことがうかがえます。

    価格帯別では、50万~75万ドンの商品群の販売額が750億ドン超と最も大きく、次いで20万~35万ドンの商品群が600億ドン超、35万~50万ドンの商品群が550億ドン超となっていました。

    興味深いのは、一定の価格帯に販売が集中するだけでなく、複数の価格帯でまとまった売上が生まれていたことです。ただし、このデータだけで購入者の所得層や購買目的まで判断することはできません。

    また、当時は海外ブランドだけでなく、ベトナム国内のブランドもピックルボール専用の商品を展開していたと報じられています。新しい流行に対して、現地企業が比較的短期間で商品開発や販売に動いていた点も興味深いところです。

    2026年の今、あらためて注目したい3つのポイント

    1. 新しい消費トレンドが短期間で大きな市場を形成したこと

    今回のニュースで最も興味深いのは、市場の立ち上がりのスピードです。ピックルボールはベトナムでは2018年頃から知られていたものの、2024年から2025年にかけて急速に普及したと紹介されています。

    スポーツや趣味の流行は、参加者が増えるだけでは必ずしも大きな消費市場になるとは限りません。しかし、ピックルボールの場合は、関連商品のEC販売額が短期間で大きく増加していました。

    ベトナム市場を考えるうえでは、こうした流行がどのような経路で広がり、どの段階で実際の商品購入につながるのかが重要な調査テーマになります。

    ただし、2025年に高い成長率を記録したことと、2026年10月現在も同じペースで成長していることは別の話です。一時的なブームなのか、長期的に定着する市場なのかは、最新の販売実績や競技人口などを確認する必要があります。

    2. EC販売データから流行を捉えられること

    もう一つ興味深いのが、今回のような新しい消費トレンドをEC販売データから把握できることです。

    ベトナムではShopeeやTikTok Shopなどが主要なオンライン販売チャネルとなっています。こうしたプラットフォームのデータを分析することで、売れている商品、価格帯、販売数量、競合ブランドなどを把握できます。

    日本企業がベトナム市場を調査する際にも、ECデータは新しい需要を発見するための情報源になります。特に、まだ市場統計が十分に整っていないカテゴリーでは、消費者が実際に何を購入しているのかを確認するうえで役立ちます。

    一方、オンラインの販売データだけでは、実店舗の売上や消費者の購買動機までは分かりません。市場全体を評価するには、現地店舗の調査や消費者インタビューなどと組み合わせることが重要です。

    3. 一つの流行が周辺ビジネスにも波及していたこと

    ピックルボールの流行は、ラケットやシューズの販売だけでなく、コート運営などの周辺ビジネスにも影響を与えていました。

    Dân tríの記事では、ベトナムの縫製企業Garmex Saigonが、協力企業とともに保有地の一部をピックルボールなどのスポーツ施設として活用する事例も紹介されています。

    もともとスポーツ用品を取り扱っていなかった企業にも、新しい収益機会を生む可能性があったわけです。

    市場調査では、直接的な商品需要だけでなく、その流行によって新しく必要になる施設、サービス、関連商品などにも目を向けることが大切だと感じます。

    日本企業のベトナム市場調査にとっての示唆

    ピックルボールの事例を振り返ってみると、ベトナム市場では、消費者の関心が短期間で購買行動に結びつくことがあると分かります。

    ただし、急成長しているカテゴリーを発見したからといって、すぐに市場参入すべきということではありません。成長率が高い市場ほど、初期のブームによる需要と、長期的に継続する需要を分けて考える必要があります。

    例えば、2026年10月の今、この市場への参入可能性を調査するのであれば、以下のような点を確認したいところです。

    • 2025年のブーム後も、競技人口や施設利用が維持されているか
    • 2026年のEC販売額や販売数量がどのように推移しているか
    • 初心者向け商品だけでなく、買い替えや高価格帯の商品に需要があるか
    • 現地ブランドと海外ブランドの競争状況はどうなっているか
    • ECと実店舗では、消費者の購買行動にどのような違いがあるか

    実際、Metric.vnでは2025年通年のピックルボールラケットやスポーツウェアなどの販売データも確認できます。ただし、それぞれ商品カテゴリーや調査条件が異なるため、2025年上半期の関連用品全体の数字と単純に比較することはできません。

    過去のニュースは市場の変化を知るための手掛かりになりますが、現在の事業機会を判断する際には、あらためて最新データを使った市場調査が必要です。

    まとめ:過去のブームからもベトナム市場の特徴が見えてくる

    今回は、2025年8月に報じられた、ベトナムのピックルボール関連用品市場に関するニュースをご紹介しました。

    2025年上半期だけでEC販売額が5,106億ドンに達し、前年同期比1,282%増を記録したという数字は、当時の急激な消費拡大を示す興味深いデータです。

    2026年10月の今から振り返ると、単に「ピックルボールが流行した」という話ではなく、新しいトレンドが商品販売や施設運営など、複数のビジネスに波及した事例として見ることができます。

    ベトナム市場を調査する際には、最新の数字を追うことはもちろん、こうした過去のトレンドがどのように生まれ、拡大し、定着していくのかを継続的に観察することも重要だと思います。

    ※本記事は2025年8月8日付のDân tríの報道を中心に、2026年10月時点の視点から市場動向を考察したものです。2025年の販売実績は過去のデータであり、現在の市場規模や成長率を示すものではありません。

  • ベトナムのペット市場に新たな商機、ペット飼育率67%の実態とは

    ベトナムのペット市場に新たな商機、ペット飼育率67%の実態とは

    ベトナムのペット市場について、興味深い現地メディアの記事がありました。少し前の記事になりますが、参考までにご紹介します。

    ベトナム経済メディア「VnEconomy」の2026年4月9日付記事によると、ベトナムでは犬や猫などのペットを飼育する人が増えており、ペットフードやペット用品だけでなく、動物病院やトリミングなどの関連サービス市場も成長しているようです。

    特に興味深いのは、ベトナムのペット市場が2027年には7億米ドルを超える規模に成長すると予測されている点です。

    出典:VnEconomy「Việt Nam trong làn sóng tăng trưởng kinh tế thú cưng」(2026年4月9日)

    ベトナムのペット市場は2027年に7億米ドル超へ

    同記事で紹介されている市場予測によると、ベトナムのペット関連市場は2023年の約5億米ドルから、2027年には7億米ドル超に拡大すると見込まれています。年間の平均成長率は約11%とされており、比較的高い成長が期待される市場の一つといえそうです。

    また、2026年にはベトナム国内のペットの総数が3,300万匹を超える可能性があるとも紹介されています。

    もちろん、こうした数字は市場規模の定義や対象となる動物の種類によっても変わるため、詳細な市場調査では確認が必要です。ただ、ペット関連産業が今後のベトナム消費市場において注目すべき分野であることは間違いなさそうです。

    ベトナムのペット飼育率は67%、アジア太平洋地域平均を上回る

    もう一つ興味深いのが、ペットの飼育率です。

    記事で引用されているTGM Researchの調査によると、ベトナムでは回答者の67%がペットを飼育していると回答しています。これはアジア太平洋地域の平均である56%を上回る数字です。

    ペットは単に家で飼育する動物というだけではなく、家族の一員や日常生活のパートナーとして捉えられるようになってきています。

    こうした意識の変化に伴い、消費者がペットの健康や生活環境にお金を使うようになれば、関連商品の需要もさらに多様化していくと考えられます。

    ペットフードだけでなく、トリミングや動物病院などのサービスも成長

    ペット市場というと、まずペットフードやおやつ、首輪、トイレ用品などをイメージしますが、今回の記事ではサービス市場の成長についても触れられています。

    特にハノイやホーチミン市などの大都市では、以下のようなサービスへの需要が高まっているとされています。

    • ペットホテル・一時預かりサービス
    • トリミング・ペットスパ
    • 動物病院・獣医療サービス
    • ペットのしつけ・トレーニング
    • 健康管理・栄養関連商品

    これはペットの飼育数が増えているだけでなく、飼い主一人当たりの支出にも変化が起きていることを示唆しています。

    今後は、価格の安い商品だけでなく、品質や安全性、機能性などを重視した商品にも一定の需要が生まれる可能性があります。

    韓国からベトナムへのペットフード輸出も拡大

    海外企業の動向も注目したいポイントです。

    VnEconomyの記事では、Euromonitor Internationalの評価として、2025年の韓国からベトナムへのペットフード関連輸出額が2,720万米ドルに達したと紹介されています。

    韓国では食品メーカーなどがペットフード事業を強化しており、海外市場の一つとしてベトナムも注目されているようです。

    日本企業にとっても、ペットフードやおやつ、衛生用品、ケア用品などは市場調査の対象として興味深い分野ではないでしょうか。

    ただし、市場が成長しているからといって、すべての価格帯や商品カテゴリーに需要があるとは限りません。実際の参入検討では、競合ブランド、輸入品と国産品の価格差、販売店舗、消費者の購入頻度などを確認する必要があります。

    市場調査では販売チャネルの変化にも注目

    今回の記事では台湾の事例も紹介されており、ペット用品の購入においてECと実店舗が異なる役割を担っている点が興味深いところです。

    例えば、重量のあるペットフードや猫砂などはECでまとめて購入し、おやつなどの小型商品はコンビニエンスストアなどで購入するという消費行動です。

    これは台湾で紹介されている傾向ですが、ベトナム市場でも参考になる視点だと思います。

    ベトナムではECに加えて、ペットショップ、スーパーマーケット、専門店、伝統的小売店など複数の販売チャネルがあります。どのチャネルで、どのような価格帯の商品が販売されているかを確認することが重要です。

    特に日本企業がベトナムへの輸出や販路開拓を検討する場合には、ペットフードと衛生用品では適した販売チャネルが異なる可能性もあるため、商品カテゴリー別に調査する必要がありそうです。

    ベトナムのペット市場は今後も注目したい分野

    今回ご紹介したVnEconomyの記事からは、ベトナムのペット市場が単なる飼育頭数の増加だけでなく、ペットに対する消費者の意識や支出の変化によって成長している様子がうかがえます。

    一方、同記事では動物病院の許認可や獣医療関連の管理体制など、業界制度面の課題についても触れられています。特に医療サービスやワクチンなどの分野では、実際の事業展開に際して最新の規制確認が必要です。

    市場調査の観点では、ペット飼育率や市場規模だけでなく、消費者がどのような商品・サービスにお金を使っているのか、どの販売チャネルが利用されているのか、といった点も確認していくと面白い市場だと思います。

    ベトナムのペット関連市場への進出を検討されている企業にとって、今回の記事は参考になるのではないでしょうか。

    MAI Internationalでは、ベトナムの市場規模調査、競合調査、店頭調査、販売チャネル調査などを行っています。具体的な調査内容については、ベトナム市場調査サービスもご参照ください。

    参考記事:VnEconomy「Việt Nam trong làn sóng tăng trưởng kinh tế thú cưng」

    ※本記事は2026年4月9日付の現地報道を参考にした市場動向の紹介です。市場予測や調査数値は記事中で引用されているものであり、MAI Internationalが独自に検証した数値ではありません。法令・許認可については最新の規定を関係当局や専門家にご確認ください。

  • 平均所得だけでは見えない消費市場、労働者調査に見る家計の実態

    平均所得だけでは見えない消費市場、労働者調査に見る家計の実態

    ベトナム市場を調査していると、GDPや小売売上高、平均所得といったマクロの数字だけでなく、「実際の生活者は、毎月どの程度お金に余裕があるのか」が気になることがあります。

    そんな中、Báo Đầu Tưにベトナムの労働者約2,000人を対象とした家計・生活実態に関する記事が掲載されていました。賃金だけでなく、借入、住宅、教育費、結婚、出産まで数字が出ており、ベトナム市場を調査するうえで興味深いデータなので、今回はご紹介します。

    調査は2026年3〜4月に7省・市の196企業、約2,000人の労働者を対象として実施されたもので、ベトナム労働総連盟が2027年の地域別最低賃金を検討する際の材料として使用したものです。

    ベトナム労働者約2,000人の調査で見えてきたこと

    まず、今回の調査で印象的だった数字を見てみます。

    • 54.3%が「現在の給与・所得で家族の基本的な支出をちょうど賄える」と回答
    • 20.6%は「生活費が不足しており、残業によって補っている」と回答
    • 26.8%が毎月、生活を安定させるために借入をしていると回答
    • 32.1%が民間の賃貸住宅に居住
    • 未婚者の55.3%が、給与を結婚判断に影響する主な要因と回答
    • 既婚者の72.9%が、現在の所得が追加の出産判断に影響すると回答

    「ベトナムは所得が上昇している」という話はよく耳にしますが、この調査を見ると、所得の伸びだけでは生活者の実態を把握できないことが分かります。市場調査では、給与額そのものよりも、住宅費や教育費などを支払ったあとに、実際にいくら残るのかを見る必要があります。

    なお、この調査は全国民を対象とした消費者調査ではなく、7省・市にある企業の労働者を対象としています。そのため「ベトナム人全体の平均」として読むのではなく、製造業や工業団地周辺などで働く労働者層の生活実態を知るための参考データとして見るのがよいと思います。

    給料は「いくらあるか」より「いくら残るか」が重要

    調査では、54.3%の労働者が現在の給与・所得で基本的な生活費を「ちょうど賄える」と回答しています。一方、17.2%は節約しながら生活しており、20.6%は通常の所得だけでは生活費が不足するため、残業によって補っていると回答しています。

    さらに興味深いのが借入です。26.8%が毎月生活を安定させるためにお金を借りており、32.7%も3〜4カ月に一度程度、突発的な支出に対応するため借入をしていると回答しています。

    市場調査では「月収」だけ聞いても購買力は分からない

    消費者調査では、「月収はいくらですか」という質問をよく使います。しかし、同じ月収1,000万ドンの人でも、実家暮らしか賃貸か、独身か子育て世帯か、残業代への依存度が高いかによって、自由に使える金額は大きく変わります。

    そのためベトナムで価格受容性や購買力を見る場合は、月収だけでなく、住宅費、教育費、家族人数、借入、残業収入なども合わせて確認した方が実態を把握しやすくなります。特に低価格帯から中価格帯の商品では、「所得階層」と「実際の可処分所得」が一致しているとは限らない点に注意したいところです。

    住宅費もベトナム労働者の大きな負担

    住宅については、回答した労働者の32.1%が民間の賃貸住宅に住んでおり、企業が用意する集合住宅に住む人は0.9%でした。

    平均居住面積は23.56平方メートル、平均居住人数は3.08人とされています。単純計算すると1人当たりでは約7.6平方メートルとなり、若い労働者世帯にとって住宅環境と住宅コストが大きなテーマになっていることがうかがえます。

    工業団地周辺を実際に調査すると、工場の近くにワンルーム型の賃貸住宅、食堂、雑貨店、保育施設などがまとまって形成されている地域も多くあります。消費財や小売、外食、教育、金融サービスなどを調査する場合には、こうした「工場周辺の生活圏」単位で消費行動を見ることも重要です。

    教育費と子育て費用も消費余力に影響

    子育て世帯では教育費も負担になっています。調査では55.5%の労働者が、現在の給与では教育・子育てに必要な費用の一部しか賄えないと回答しています。

    子どもがいる世帯では、学費だけでなく、教材、食費、送迎、保育、医療など複数の支出が発生します。そのため同程度の所得でも、独身者と子育て世帯では食品、外食、レジャー、耐久消費財などに使える金額がかなり変わる可能性があります。

    賃金は結婚・出産の判断にも影響

    今回の調査で特に興味深かったのが、所得と結婚・出産の関係です。

    未婚の労働者では55.3%が、給与を結婚の判断に影響する主な要因として挙げています。また、すでに結婚している労働者では72.9%が、現在の給与・所得が「もう一人子どもを持つかどうか」の判断に影響すると回答しています。

    住宅、教育、医療などの支出を考えると、「結婚できるか」「子どもを増やせるか」という判断にも家計の余裕が関係しているということです。

    これは単なる労働問題だけではありません。中長期的には、ベビー用品、教育、住宅、保険、ヘルスケア、食品、小売など、さまざまな市場の需要構造にも関係してくるテーマです。

    ベトナム市場調査では「平均所得」だけを見ない

    今回の記事を市場調査という視点で見ると、改めて重要だと思うのが「平均所得=消費余力ではない」という点です。

    ベトナムでは都市部、中間所得層、若年層などを一括して分析してしまうことがありますが、実際には居住地域、勤務先、世帯人数、住宅所有の有無、子どもの人数、残業収入などによって家計構造はかなり異なります。

    価格調査では「購入できる価格」まで確認したい

    例えば食品や日用品を調査する場合、「この商品が好きですか」という質問だけでは、市場性を判断するには不十分です。

    どの価格なら購入するのか、1回当たりいくらなら支払えるのか、どの容量を選ぶのか、給料日前後で購買行動が変わるのか、プロモーション時だけ購入するのか、といったところまで聞くと、より現実的な需要が見えてきます。

    特に工場労働者を含むボリュームゾーンを対象とする商品では、単価だけでなく、小容量化、購入頻度、販促、販売場所などをセットで確認することが重要です。

    所得データと現場調査を組み合わせる

    こうした市場では、統計データだけを見るより、実際に工業団地周辺の住宅、小売店、市場、飲食店などを観察し、そこで働く人に聞き取りを行う方が理解しやすいことがあります。

    例えば「月収1,000万ドン」という数字を把握したあとに、家賃、食費、教育費、送金、借入などを聞いていくと、その人が実際に商品やサービスへ使える金額が見えてきます。

    MAI Internationalでも、ベトナム市場調査では統計・デスクトップリサーチだけでなく、消費者アンケート、インタビュー、店頭調査などを組み合わせ、実際の購買行動を確認することを重視しています。

    2027年の最低賃金引き上げも市場を見る材料に

    今回の調査は、2027年の地域別最低賃金を検討する材料として実施されています。

    2026年の地域別最低賃金は、第I地域531万ドン、第II地域473万ドン、第III地域414万ドン、第IV地域370万ドンです。

    その後、国家賃金評議会は2027年1月1日から平均7.8%引き上げる案で合意し、政令案では第I地域570万ドン、第II地域508万ドン、第III地域445万ドン、第IV地域404万ドンとする案が示されています。ただし、本稿執筆時点では政令案の審査過程にあるため、最終決定としてではなく「提案中の水準」として確認する必要があります。

    日本企業にとって最低賃金の上昇は、人件費というコスト面だけでなく、労働者世帯の購買力という需要面にも関係します。ただし、賃金が上昇しても住宅費や教育費、物価などが同時に上昇すれば、その分がそのまま消費に回るわけではありません。

    その意味でも、今後のベトナム市場を見る際には「所得が何%増えたか」だけでなく、生活者の手元に実際にどれだけお金が残るのかを追っていくと、市場の変化をより正確に理解できると思います。

    まとめ:ベトナム市場は「生活者の財布」から見ると面白い

    今回紹介した調査は、ベトナム全体の消費者を代表するものではありません。一方で、工場や企業で働く一般労働者が、給与、住宅、子育て、借入をどのように捉えているのかを具体的な数字で見ることができる点で、市場調査をするうえでは非常に興味深い資料だと思います。

    平均所得やGDPだけを見ていると「ベトナムの購買力は上昇している」という結論になりやすいのですが、実際の商品・サービスの市場性を考える場合には、その所得から何に支払い、最後にいくら残るのかまで確認する必要があります。

    ※本記事は2026年10月時点の報道および公表資料をもとにした一般的な解説です。調査結果は対象となった7省・市、196企業、約2,000人の労働者についての結果であり、ベトナム全国の消費者を代表するものではありません。また、最低賃金など最新の法令・政令・通達・解釈については、必ず関係当局や専門家にご確認ください。

  • ベトナムの新しいカフェチェーン急拡大、海外ファンドが3度目の投資

    ベトナムの新しいカフェチェーン急拡大、海外ファンドが3度目の投資

    ベトナムでEvery Halfの資金調達記事を見つけました

    今回、ベトナムの投資・経済メディア「Báo Đầu tư」で、スペシャルティコーヒーチェーン「Every Half Coffee Roasters」に関する興味深い記事を見つけました。

    企業発表や投資家側のコメントを中心に構成されているため、PR記事・広告的な側面がある可能性もありますが、ベトナム国内のカフェ市場や消費財ブランドの成長戦略を見るうえではなかなか興味深い内容でしたので、今回は参考までにご紹介します。

    元記事はこちらです。Every Half gọi thêm 8 triệu USD từ quỹ ngoại, tăng tốc mở rộng mạng lưới cửa hàng|Báo Đầu tư

    Every HalfがSeries Aで800万ドルを調達

    元記事によると、Every Half Coffee RoastersはSeries Aで800万米ドルの資金調達を完了しました。投資したのは既存株主であるOpenspace CapitalとDSG Consumer Partnersの2社で、Seed、Pre-Series Aに続き、今回が3回目の投資になるとのことです。

    Every Halfは2021年に設立されたベトナム発のスペシャルティコーヒーブランドです。記事掲載時点ではベトナム国内で36店舗を運営しており、1年前の14店舗から店舗網を拡大。元記事では、小売店舗数ベースで157%増加したとされています。

    単純に店舗数だけを見てもかなり速いペースです。ベトナムのカフェ市場は大手チェーンから独立系店舗まで競争が激しい市場ですが、その中で海外投資ファンドが継続して資金を投入しているという点は注目してよいでしょう。

    ベトナムのカフェ市場全体については、MAI Internationalの「飲料売上は伸びるのに来店頻度は減る? 変化するカフェ利用」でも紹介しています。

    興味深いのは「カフェ店舗を増やす」だけではない点

    今回の記事で個人的に面白いと感じたのは、調達した800万ドルを単純な新規出店だけに使う計画ではない点です。

    Every Halfは今後、ベトナム主要都市で店舗網を拡大すると同時に、以下のような領域にも投資するとしています。

    • ECによる販売チャネルの拡大
    • モダントレード(スーパー、近代的小売チェーンなど)への展開
    • パッケージコーヒーなどCPG(Consumer Packaged Goods)の拡大
    • 海外市場への商品販売
    • コーヒーの一次加工や発酵技術の研究
    • 焙煎能力・生産能力の増強
    • 農家・農業協同組合との連携強化

    つまり、Every Halfを単なる「カフェチェーン」として拡大するというより、店舗をブランド接点として持ちながら、EC、小売、加工食品、海外販売まで広げていく消費財ブランドを目指しているように見えます。

    特にベトナムでは、店舗で認知を作ったブランドがECやモダントレードへ販売チャネルを広げていく動きは、日本企業がベトナム市場を検討する際にも参考になります。モダントレードへの販売については、MAI Internationalの「MT(モダントレード)でのマーケティングサポート」でも現地流通の特徴を紹介しています。

    農園から店舗まで関与する「垂直型」のブランドづくり

    もう一つ特徴的なのが、原料調達側への投資です。元記事では、Every Halfが直接連携するコーヒー栽培地域を2025年の約8ヘクタールから、2026年には18ヘクタールへ拡大し、長期的には50ヘクタールを目指していると紹介されています。

    また、一次加工、発酵技術、焙煎、生産能力にも投資するとしています。つまり店舗デザインやマーケティングだけではなく、農家との連携から加工、焙煎、店舗、パッケージ商品まで、コーヒーのバリューチェーン全体に関与しようとしているわけです。

    スペシャルティコーヒーの場合、「どこで作られた豆なのか」「どのように加工されたのか」といった背景そのものが商品の付加価値になります。そのため、原料側まで関与することは、品質管理だけでなくブランドストーリーを作るうえでも重要になってきます。

    ベトナムのカフェ市場は「安いコーヒー」だけではなくなっている

    ベトナムといえば、街中のローカルカフェで安価なベトナムコーヒーを飲むイメージがまだ強いかもしれません。しかし都市部を見ると、カフェ市場はかなり細分化しています。

    低価格で日常的に飲むコーヒーがある一方、空間、豆の品質、抽出方法、ブランドストーリーなどに付加価値を付けた店舗も増えています。Every Halfのようなスペシャルティコーヒー企業への投資は、こうしたベトナム消費市場のプレミアム化を見る一つの材料ともいえそうです。

    ベトナムのカフェチェーンやコーヒー消費の背景については、過去記事「ベトナムのカフェチェーン事情と拡大するコーヒー消費量」もあわせてご覧ください。

    日本企業として注目したい3つのポイント

    1.ベトナム企業を「低価格のローカル企業」と見ない

    今回のEvery Halfの事例から感じるのは、ベトナムの消費財企業がかなり速いスピードでブランド化、資金調達、チェーン展開を進めていることです。

    日本企業がベトナム市場へ参入する場合、「日本ブランドだから品質面で優位」という前提だけで市場を見るのは危険です。カテゴリーによっては、ベトナム企業側も商品開発、店舗体験、デジタルマーケティング、資金力を備え始めています。

    2.店舗だけでなく複数チャネルを最初から考える

    Every Halfが店舗、EC、モダントレード、パッケージ商品、海外販売を同時に広げようとしている点も参考になります。

    ベトナム進出を考える日本の食品・飲料・日用品メーカーでも、「スーパーに商品を置く」「ECだけで販売する」といった単一チャネルだけではなく、店舗・EC・MT・法人販売などをどのように組み合わせるかという視点がより重要になっています。

    3.現地の競合企業を定期的に追う必要がある

    1年前に14店舗だった企業が36店舗まで増えるような市場では、数年前の市場調査資料だけを使って競合環境を判断するのは難しくなります。

    ベトナム市場では、新規ブランドの登場、資金調達、店舗拡大、EC参入などによって競争環境が短期間で変化することがあります。そのため進出前だけではなく、進出後も競合店舗、価格、商品構成、販売チャネルなどを継続的に確認することが重要です。

    まとめ:ベトナム発ブランドの成長スピードを見る一つの事例

    今回の記事は企業側の発表をベースにしたPR色のある内容である可能性もあり、将来の売上や事業計画についてはそのまま鵜呑みにするのではなく、一定の割り引きをして読む必要があります。

    それでも、ベトナム発のスペシャルティコーヒーブランドが海外ファンドから継続的に資金を調達し、店舗だけでなくEC、モダントレード、加工商品、海外市場、さらに原料調達まで広げようとしているという動きは興味深いものです。

    ベトナム市場を見る際には、外資系企業の進出だけでなく、こうした地場企業がどのように資金を集め、ブランドを作り、販売チャネルを広げているのかを追っていくと、消費市場の変化がより見えやすくなります。

    MAI Internationalでは、ベトナム市場への参入を検討する企業向けに、市場規模調査、競合企業調査、店頭調査、消費者調査、販路開拓調査などを実施しています。ベトナム企業の競合状況や販売チャネルを具体的に把握したい場合は、ベトナム市場調査サービスもご参照ください。

    ※本記事はベトナム現地メディアおよび公開情報をもとにした一般的な紹介です。資金調達額、店舗数、売上見通し、出店計画等は報道・各社公表時点の情報であり、今後変更される可能性があります。

  • ベトナムの24時間カフェThree O’Clock、海外展開を加速

    ベトナムの24時間カフェThree O’Clock、海外展開を加速

    ベトナムの経済メディアCafeFに2026年10月1日、ホーチミン市発のカフェチェーン「Three O’Clock」の海外展開を取り上げた記事が掲載されていました。

    内容としてはなかなか興味深いです。ベトナム企業が海外展開する際に、単純に「ベトナムコーヒーを輸出する」のではなく、店舗の使われ方や運営モデルまで含めてフランチャイズ化している事例として見ることができます。

    Three O’Clockとは?「24時間営業」を特徴にしたホーチミン市発のカフェ

    Three O’Clockは2016年にホーチミン市でスタートしたカフェチェーンです。特徴は店名にも表れているように、24時間営業をブランドの重要な特徴としてきたことです。

    ホーチミン市では、夜遅くまで友人とカフェで話したり、学生や若い会社員がパソコンを開いて勉強や仕事をしたりする光景をよく見かけます。深夜2時、3時でも利用できるカフェというのは、日本人からすると少し不思議に感じますが、ホーチミン市の都市生活とは意外と相性の良い業態です。

    Three O’Clockは、コーヒーやフルーツティーといった商品だけではなく、「時間を気にせず滞在できる都市型の場所」という利用シーンをブランドの特徴にした点が面白いと思います。

    インドでは現地パートナーと組み、フランチャイズで展開

    CafeFの記事によると、Three O’Clockは海外展開にあたり、自社ですべての店舗を運営するのではなく、現地企業とのマスターフランチャイズ方式を採用しています。

    南アジアではFranGlobalと提携し、インド、ネパール、スリランカ、バングラデシュの4市場を対象に展開する計画です。2025年11月にはインドで最初の3店舗が開業したことが、ベトナム国営放送VOVやTuoi Treなどでも報じられています。

    その後の店舗数について、CafeFは2026年8月27日時点でインド国内11店舗になったと伝えています。ただし、この「11店舗」という数字については今回確認した範囲ではブランド以外の一次資料までは確認できていないため、現地メディア報道ベースの数字として見ておくのがよいでしょう。

    インド向けには「ベトナムらしさ」を残しつつ現地化

    興味深いのは、ベトナムの店舗をそのままコピーしているわけではないことです。記事では、ベトナム式のフィンコーヒーやココナッツコーヒーなどを残しながら、甘さ、サイズ、フードメニューなどを市場に合わせて調整していると紹介されています。

    つまり「ベトナム人の飲み方を海外消費者に押し付ける」のではなく、現地の消費習慣の中にベトナムらしさを入れていくという考え方です。この発想は、食品・飲料メーカーがベトナム市場へ参入する場合にも参考になります。

    インドネシアでは1年弱で5店舗へ

    インドネシアでは2025年10月、PT Tiga Waktu Rasaとのフランチャイズ契約が発表されました。契約では10年間で50店舗を目指す計画と報じられています。

    Three O’Clock自身の公式サイトでは、2026年8月27日にジャカルタのGading Walkへ5店舗目をオープンしたことが発表されています。この部分については、ブランド側の公式情報でも確認できます。

    インドネシアはもともとコーヒー文化が強く、ローカル系カフェチェーンも多数存在します。その市場へ「ベトナムのコーヒー」という商品だけで勝負するのではなく、24時間営業、店舗空間、ココナッツコーヒーやエッグコーヒーなどを組み合わせて差別化を図っている点は興味深いところです。

    「11カ国進出」という見出しは少し注意して読む必要がある

    CafeFの記事タイトルでは、Three O’Clockのモデルが「11カ国へ」と紹介されています。ただし、ここは少し注意が必要です。

    2026年10月時点の記事内容を見る限り、実店舗の展開が具体的に進んでいる中心市場はインドとインドネシアです。一方、中東のGCC(湾岸協力会議)地域については、UAE、サウジアラビア、カタールなど6カ国を対象としたフランチャイズ契約があるものの、CafeF自身がまだ実店舗は開業していないと説明しています。

    したがって、「11カ国で店舗を営業している」というより、フランチャイズ契約・展開対象国まで含めて11カ国と理解する方が実態に近そうです。

    面白いのは「コーヒー」ではなく「利用シーン」を輸出していること

    個人的にこの記事で最も興味深かったのは、Three O’Clockが輸出しようとしているものが、必ずしもコーヒーそのものだけではない点です。

    ベトナムコーヒーを海外で販売する企業は珍しくありません。しかしThree O’Clockの場合、24時間営業、仕事や勉強のできる席、長時間滞在しやすい空間、ベトナムらしいドリンク、店舗オペレーションなどをまとめて一つのフォーマットにしています。

    つまり、商品ではなく「午前3時でも人が集まれるカフェ」という消費シーンそのものを商品化しているとも考えられます。

    成熟して競争が激しくなっているベトナムのカフェ市場では、単に「おいしい」「安い」だけで差別化することが難しくなっています。利用目的や時間帯まで含めてポジションを取るという考え方は、今後さらに重要になりそうです。

    一方で、フランチャイズ拡大には品質管理という課題も

    CafeFの記事はThree O’Clockを肯定的に紹介するだけではなく、店舗によって顧客評価に差があることにも触れています。フランチャイズで急速に店舗数を増やす場合、接客、味、衛生、オペレーションなどをどこまで均一化できるかは避けて通れません。

    特に海外フランチャイズの場合、本部から距離が離れるほど、現地パートナーの運営能力がブランド体験へ直結します。契約店舗数の大きさよりも、実際に何店舗が開業し、既存店舗がどの程度安定して運営されているかを見ることが重要です。

    日本企業にも参考になる3つのポイント

    1.商品ではなく「使われ方」まで設計する

    日本企業がベトナムへ進出する場合も、「日本の商品だから」というだけでは差別化になりにくくなっています。その商品を誰が、いつ、どこで、どのような目的で利用するのかまで具体化した方が、市場でのポジションを作りやすくなります。

    2.現地パートナーを単なる販売代理店として考えない

    Three O’Clockのモデルでは、現地の法制度、商習慣、物件、物流、消費者嗜好を理解するフランチャイズパートナーが重要な役割を担っています。海外展開では、本社がすべてをコントロールするよりも、どの部分を現地へ任せ、どの部分をブランドの必須条件として残すのかを決めることが重要です。

    3.標準化とローカライズを同時に考える

    ブランドイメージや基本オペレーションは標準化しながら、味、容量、価格、メニュー構成などは市場に合わせる。このバランスは、F&Bに限らず、日本企業がベトナムで事業展開する際にも重要な考え方です。

    ベトナム発ブランドの海外展開は、今後も面白いテーマ

    今回の記事はPR的な要素を含んでいる可能性もありますので、出店計画や店舗数をそのまま評価するのではなく、継続的に実績を追っていく必要があります。

    それでも、ベトナム企業が国内市場で作ったブランドや消費スタイルを、フランチャイズという仕組みを使って海外へ持ち出し始めている点は非常に興味深いです。これまで「海外ブランドがベトナムへ入ってくる」というニュースが多かったのに対し、今後はベトナム発ブランドが海外市場へ出ていく動きにも注目していきたいところです。

    Three O’Clockが数年後、本当に国際的なカフェチェーンになっているのか。それとも海外展開の難しさに直面するのか。個人的にも引き続きウォッチしてみたい企業の一つです。

    MAI Internationalができる支援

    MAI Internationalでは、ベトナム市場への進出を検討する日本企業向けに、市場調査、競合調査、消費者調査、テストマーケティング、販売チャネル開拓、現地法人設立支援などを行っています。

    特にF&B・消費財分野では、「市場が伸びているか」だけではなく、どの価格帯、利用シーン、チャネル、ターゲットに参入余地があるのかを具体的に検証することが重要です。

  • ドリアン価格がシーズン終盤に急騰、一部10万ドン/kgへ

    ドリアン価格がシーズン終盤に急騰、一部10万ドン/kgへ

    ベトナム国内のニュースを見ていて、ちょっと興味深い記事を見つけましたのでご紹介します。

    2026年9月18日付のベトナム現地メディア「Dân Việt」が、収穫シーズン終盤を迎えたドリアンの価格が上昇し、中部高原などで商人が残っているドリアンを探し回っていると報じています。

    ベトナムではドリアンがここ数年、重要な輸出農産物の一つになっています。そのため、今回の記事は単なる「果物の値上がり」という話だけではなく、ベトナムの農産物輸出や中国市場との関係を見るうえでもなかなか興味深い内容です。

    元記事はこちらです。
    Dân Việt「Sầu riêng cuối vụ giá tăng kịch trần, thương lái lùng khắp vườn Tây Nguyên」

    ベトナムのドリアン、A級品は8万~9万ドン/kgに上昇

    Dân Việtの報道によると、2026年9月17日時点で、品質の良いA級ドリアンの買い取り価格は1kgあたり8万~9万ドン、B級品でも6万~7万ドン程度になっていました。

    さらに、一部の農園や集荷拠点では、商人への販売価格が10万ドン/kg近くに達するケースもあったと報じられています。収穫のピーク時と比べて市場に出回る量が大きく減ったため、残っているドリアンを確保しようとする動きが強まっているようです。

    特に記事で紹介されているのが、中部高原の主要産地です。多くの農園ではすでに1~2カ月前に本格的な収穫を終えており、現在残っているドリアンは限られています。

    その結果、買い付け業者が品質の条件を満たすドリアンを求め、まだ果実が残っている農園を探す状況になっています。「商品が余って値崩れする」のとは逆に、シーズン終盤の供給不足によって価格が押し上げられているわけです。

    価格が上がっても、農家全員が恩恵を受けられるわけではない

    今回の記事で個人的に面白いと感じたのが、この部分です。

    現在の価格だけを見ると農家にとって非常に良い状況に見えます。しかし、実際には多くの農園ですでに収穫と販売が終わっています。記事では、約2カ月前に農園全体のドリアンを約7万ドン/kgで販売した農家も紹介されています。

    ドリアンは、価格が上がりそうだからといって、いつまでも木につけたまま待てる商品ではありません。適切な成熟段階で収穫しなければ品質や商品価値に影響するためです。

    つまり今回の10万ドン/kgという価格は、ドリアン市場全体の平均価格というより、シーズンの最後に残った限られた商品を巡る価格として見る必要があります。

    ベトナムの農産物市場を見る際には、このように「現在の価格」だけでなく、収穫時期や供給量、産地ごとのシーズンを合わせて見ることが重要です。

    背景には拡大するベトナムのドリアン輸出

    もう一つ注目したいのが、ベトナムのドリアン輸出そのものが非常に大きな市場になっていることです。

    ベトナム農業環境省によると、2026年1~8月のドリアン輸出額は約19億7,000万米ドルに達し、このうち中国向けだけで約18億5,000万米ドルとなっています。

    つまり、ベトナム国内のドリアン価格を見る際には、中国向け輸出の状況を切り離して考えることが難しくなっています。中国側の需要、輸入条件、検査体制などの変化が、産地での買い付けにも影響しやすい構造です。

    栽培地域コードと包装施設コードの整備も進む

    Dân Việtの記事では、価格上昇とともに栽培地域コード(Mã số vùng trồng)と包装施設コード(Mã số cơ sở đóng gói)についても触れられています。

    これらは、輸出農産物の産地や包装施設を特定し、品質管理やトレーサビリティを行うための仕組みです。特に中国など、輸入時に登録された産地・施設を求める市場へ輸出する際には重要になります。

    2026年8月14日には、中国税関総署(GACC)がベトナム産ドリアンについて、新たに401の栽培地域コードと166の包装施設コードを承認しました。

    またベトナム政府は2026年7月31日、決議36/2026/NQ-CPを公布し、栽培地域コードや包装施設コードに関する行政手続きを簡素化しています。オンラインでの手続きやデータ管理、トレーサビリティを強化しながら、輸出に対応できる産地を増やしていく方向です。

    日本企業から見ると「価格」以上に面白いニュース

    今回のニュースを日本企業の視点で見ると、10万ドン/kgという数字そのものよりも、ベトナム農産物のサプライチェーンが輸出市場を中心に急速に整備されている点が興味深いと感じます。

    ドリアンに限らず、ベトナムで農産物や食品を調達する場合、単純に「どこで安く買えるか」だけを見ればよいわけではありません。

    • 産地ごとの収穫シーズン
    • 収穫ピーク時と端境期の価格差
    • 輸出先市場の需要
    • 栽培地域コードや包装施設コード
    • トレーサビリティや残留物検査
    • 集荷業者・包装施設とのネットワーク

    こうした条件によって、同じ商品でも価格や調達可能量が大きく変わります。

    今回の記事のように、「シーズン終盤になると商人が農園を探し回るほど商品が不足する」という現場のニュースは、統計だけではなかなか見えないベトナム市場の一面をよく表しています。

    ベトナムの農産物市場は、現地ニュースを見るとより立体的に見える

    ベトナムのドリアンは、中国向け輸出の拡大によって大きな産業になりました。一方で、収穫時期や輸出条件によって需給バランスが変化し、農園レベルの買い取り価格が短期間で大きく動くこともあります。

    今回Dân Việtが報じた「シーズン終盤にドリアンが品薄となり、一部で10万ドン/kg近くまで価格が上昇した」というニュースも、その特徴がよく分かる事例です。

    ベトナムで食品・農産物の仕入れ、加工、流通、輸出入などを検討している企業にとっては、マクロ統計だけでなく、こうした現地の産地ニュースを継続的に見ることも重要です。

  • Z世代は「すぐ辞める」?現地記事から見える若手の新しい仕事観

    Z世代は「すぐ辞める」?現地記事から見える若手の新しい仕事観

    ベトナムで見つけた「Gen Zはなぜ仕事を辞めるのか」という記事

    ベトナム国内のニュースを見ていて、少し興味深い記事を見つけたので今回はご紹介したいと思います。

    ベトナムの若者向け大手メディアKenh14に2026年9月15日、「“辞めたければ辞める”Gen Zは忍耐力がないのか、それとも給与アップを求めているのか?」という趣旨の記事が掲載されていました。

    タイトルだけを見ると、「最近の若者はすぐ仕事を辞める」というよくある世代論にも見えます。ただ、記事を読んでみると、実際にはもう少し興味深い内容でした。ベトナムのGen Zが仕事に求めているもの自体が、上の世代とは少し変わってきているのではないか、という話です。

    記事の冒頭では、1999年生まれの女性がホーチミン市のメディア企業を退職した事例が紹介されています。月給は約3,000万ドンで、昇進の可能性もあったそうですが、それでも彼女は退職を選択しました。退職後は旅行をしたり、抹茶の作り方や中国語を学んだりしながら、自分自身に使う時間を増やしたかったといいます。

    日本企業の感覚からすると、「待遇も悪くなく、昇進の可能性まであるのに、なぜ辞めるのだろう」と感じる方もいるかもしれません。しかし、この感覚の違いこそが、現在のベトナムにおける若手人材マネジメントを考えるうえで面白いポイントだと思います。

    ベトナムGen Zの離職率は35.7%

    記事ではTopCVの「2025-2026年採用市場レポート」のデータも紹介されています。TopCVはベトナムの主要な求人・採用プラットフォームの一つで、同レポートは企業・求職者3,000人超への調査と、約30万件の求人情報などをもとに作成されています。

    このデータによると、Gen Zは自発的な離職率が35.7%と最も高い世代とされています。理由として挙げられているのは、単純な給与への不満だけではありません。「仕事内容が合わなくなった」「自分自身を成長させたい」「新しいスキルを学びたい」といった理由も見られます。

    もちろん、実際の職場では「突然辞めてしまった」「せっかく教育したのに短期間で転職してしまった」というケースもあるでしょう。ベトナムで事業を行う日本企業からも、若手社員の定着について相談を受けることがあります。

    ただ、ここで「ベトナムのGen Zは我慢が足りない」と結論付けてしまうと、本質を見誤る可能性があります。

    「努力すれば報われる」という前提が変わっている

    今回の記事で特に興味深かったのが、RMIT Vietnamの人材マネジメント研究者による分析です。

    RMIT VietnamのPham Thanh Hang博士は、Gen Zが努力そのものを嫌っているわけではないと分析しています。むしろ若者が疑問を持つようになっているのは、「会社で一生懸命働き続ければ、その努力に比例して将来は良くなる」という一直線の関係なのだといいます。

    現在のベトナムの若者は、社会人になる前後にCOVID-19を経験し、その後はAIの急速な普及、企業の人員削減、生活費の上昇など、大きな変化を短期間で経験しています。そのため、「一つの会社に長くいれば安心」という考え方より、自分自身のスキルや市場価値を高めることを重視する人が増えていると考えられます。

    仕事を選ぶ際にも、単に「給料はいくらか」だけではなく、次のようなポイントを見るようになっています。

    • この会社で新しいスキルを身につけられるか
    • 数年後に自分自身が成長しているイメージを持てるか
    • 努力や成果を正当に評価してもらえるか
    • 自分で考えて仕事を進める裁量があるか
    • 仕事と生活のバランスを保てるか

    つまり、企業への「忠誠心」が単純に低下しているというより、会社ではなく自分自身のキャリアを軸に仕事を考える傾向が強まっていると見る方が実態に近そうです。

    給料を下げても「働きやすい会社」を選ぶ?

    もう一つ興味深い数字があります。RMIT Vietnamが紹介しているCốc Cốc ResearchとViệc Làm 24hの調査では、ベトナムのGen Z労働者の60.8%が、より自分に合った職場環境で働けるのであれば、収入が1~10%下がることを受け入れると回答しています。

    もちろん「若者は給与を気にしない」という意味ではありません。ベトナムでは給与水準や生活費への関心も非常に高く、より良い条件を求めて転職するケースも珍しくありません。

    ただし、給与だけを上げれば人材を定着させられる、とも言い切れなくなっています。給与に加えて、職場文化、上司との関係、学習機会、柔軟な働き方、仕事の意味などを含めて会社を評価する傾向が強くなっているという点は、ベトナムで採用を行う日本企業も意識しておきたいところです。

    ベトナムGen Zにとっての「安定」も変化している

    もう一つ面白いのは、「安定した仕事」の定義です。

    従来であれば、大企業に入り、長期雇用の契約を得て、その会社で長く働くことが「安定」と考えられがちでした。しかし現在は、必ずしも一つの会社に長く所属することだけが安定とは考えられていません。

    RMIT VietnamのLuong Thanh Thao博士は、若者にとっての安心感が、長期契約そのものから「employability(雇用され続ける能力)」へ移っている可能性を指摘しています。つまり、市場が必要とするスキルを維持し、環境変化に適応し、必要になれば次の仕事を見つけられる能力そのものを「安定」と考えるわけです。

    この考え方で見ると、転職や副業、フリーランスへの関心も理解しやすくなります。一つの会社の中でポジションを守ることより、自分自身のスキルや経験のポートフォリオを増やすことを優先する人が出てくるためです。

    日本企業がベトナムで若手人材を定着させるために

    では、ベトナムで若手社員を採用する日本企業はどう対応すればよいのでしょうか。

    今回の記事を読んで感じるのは、「辞めない人を採用する」という発想だけでは、若手人材の定着は難しくなっているということです。それよりも、「この会社に残ることに本人が意味を感じられる状態をどう作るか」を考える必要があります。

    1.キャリアパスを具体的に見せる

    「頑張れば昇進できます」という抽象的な説明だけではなく、1年後、3年後にどのような仕事を任せる可能性があるのか、そのためにどのようなスキルが必要なのかを具体的に示すことが重要です。

    特に日本企業では、長期間勤務した社員を徐々に昇格させる人事制度も多いですが、若手社員から見ると「いつ、何をすれば評価されるのか分からない」状態になってしまうことがあります。

    2.給与だけでなく「成長機会」を設計する

    研修を用意するだけでなく、新しい業務を任せる、プロジェクトに参加させる、日本側との業務を経験させるなど、本人が成長を実感できる機会を作ることも有効です。

    特に優秀な若手ほど、「この会社にあと2年間いた場合、自分の市場価値は上がるのか」という視点を持っています。逆に毎年同じ業務だけを担当していると、給与に大きな不満がなくても転職を考えるきっかけになります。

    3.現地マネージャーのマネジメント品質を確認する

    人材定着について考える際、給与や福利厚生ばかりが議論されがちですが、実際には直属上司との関係も非常に重要です。

    指示だけを出す、失敗だけを指摘する、評価理由を説明しないといったマネジメントでは、若手社員が「ここにいても成長できない」と感じる可能性があります。定期的な1on1やフィードバックなどを通じ、本人のキャリアについて話す機会を設けることも検討したいところです。

    4.「日本では普通」をそのまま持ち込まない

    ベトナムで人材を採用すると、日本企業側が期待する働き方と、現地社員が期待する働き方にギャップが生まれることがあります。

    もちろん、会社として必要な規律や責任まで若手社員に合わせる必要はありません。一方で、「若いうちはまず言われた仕事を何年か続ける」「長く働けばそのうち評価される」といった暗黙の前提は、現在のベトナム人若手社員には伝わりにくくなっている可能性があります。

    「最近の若者はすぐ辞める」で終わらせないことが重要

    今回のベトナム国内記事は、一見すると「Gen Zはなぜ仕事をすぐ辞めるのか」という話ですが、読み進めてみると、現在のベトナムの労働市場がどのように変化しているかを考えるうえで興味深い内容でした。

    Gen Zが給与を重視していないわけでも、忍耐力がなくなったと単純に言えるわけでもありません。むしろ、「この会社で働き続けることで、自分に何が残るのか」を以前よりシビアに見ている、と考えた方がよいのかもしれません。

    これは採用する企業側にとって厳しい変化にも見えますが、逆に考えると、キャリアパス、教育、評価制度、マネジメント、働き方を適切に設計できる企業にとっては、優秀な若手人材を惹きつけるチャンスでもあります。

    ベトナムで現地法人を運営する際には、採用人数や給与相場だけを見るのではなく、現地社員が「ここで働き続けたい」と考える理由まで含めて、人材戦略を設計することがますます重要になりそうです。

    参考:Kenh14「Thích thì nghỉ, có phải Gen Z là lứa nhân sự thiếu kiên trì hay họ muốn tăng lương?」(2026年9月15日)

  • 10年前にタイムスリップ?広がる「2026 is the new 2016」トレンド

    10年前にタイムスリップ?広がる「2026 is the new 2016」トレンド

    ベトナムで「2026年は新しい2016年」が話題に

    ベトナムの若者向けメディア「Kenh14」を見ていたところ、ちょっと興味深いSNSトレンドの記事を見つけましたのでご紹介します。

    話題になっていたのは、「2026 is the new 2016(2026年は新しい2016年)」というトレンドです。2026年に入ってから、InstagramやTikTokなどで10年前の2016年を振り返り、当時の自分の写真や動画を投稿する動きが世界的に広がりました。そして、このトレンドはベトナムにもかなり早い段階で入ってきたようです。

    Kenh14が2026年1月16日に掲載した記事では、Quỳnh Anh Shyn(クイン・アイン・シン)、Thảo Nhi Lê(タオ・ニー・レー)、Primmy Trương(プリミー・チュオン)など、ベトナムで知られるインフルエンサーや著名人が次々と2016年当時の写真を投稿している様子が紹介されています。

    単に昔の写真を投稿するだけではなく、「10年前の自分はこんな感じだった」「あれからこんなに変わった」と、自分自身の10年間を振り返るコンテンツになっているところが特徴的です。

    2016年のSNSは、今見ると意外と“時代”を感じる

    なぜ2016年なのか。理由の一つは、当然ながら2026年からちょうど10年前だからです。

    ただ、当時のSNSを思い出すと、現在とはかなり雰囲気が違います。Instagramの強めのフィルター、Snapchatの犬の顔フィルター、彩度の高い写真、チョーカーやスキニージーンズなど、2016年前後には一目で「あの頃」と分かるようなビジュアルやファッションが数多くありました。

    Kenh14の記事では、記事掲載時点でTikTokの「#2016」には約170万件の投稿があったと紹介されています。ベトナム国内だけの数字ではありませんが、それだけ世界規模で2016年を振り返る動きが大きくなっていたことが分かります。

    海外メディアでも、「2016年そのものが客観的に良い時代だった」というより、今よりもSNSが少し気楽で、完璧に作り込まれていなかった時代への懐かしさが背景にあるのではないか、という分析が見られます。

    ベトナムでは「2016年の自分と2026年の自分が会話する」形にも発展

    さらに興味深いのは、このトレンドが昔の写真を投稿するだけでは終わらなかったことです。

    2026年3月には、ベトナムのTikTokで「2016年の自分が質問し、2026年の自分が答える」形式の動画が広がっているとKenh14が再び報じています。

    例えば、2016年当時に書いたFacebookの投稿や昔の動画を引っ張り出し、「10年後にはお金持ちになっている?」「あのとき付き合っていた人とはどうなった?」「将来はどんな仕事をしている?」といった過去の自分からの質問に、現在の自分が答えるというものです。

    当然ながら、10年前に思い描いていた人生と現在が一致する人ばかりではありません。それでも、「思っていた人生とは違うけれど、これはこれで悪くない」といった回答が共感を集めているようです。

    年初には「懐かしい写真を見る」というトレンドだったものが、その後は個人の人生や成長を語るストーリー型コンテンツに変化しているわけです。SNSトレンドが短期間で別のフォーマットへ派生していく点も、ベトナムのデジタル文化を観察するうえで興味深いところです。

    ベトナムでは海外トレンドの「ローカライズ」が速い

    今回の記事を見ていて改めて感じるのは、ベトナムでは海外で発生したSNSトレンドが非常に早く取り込まれ、ベトナム人ユーザーなりのコンテンツへ変換されていくことです。

    海外で流行したフォーマットをそのままコピーするというより、ベトナムのインフルエンサーや一般ユーザーが、自分の写真、学校生活、仕事、恋愛、家族など身近なテーマを載せることで、ローカルなコンテンツになっています。

    MAI Internationalでも以前、TikTok上で「氷が溶けるまで勉強する」というチャレンジがベトナムの若者の間で広がった事例を紹介しました。ベトナムでは、このような「誰でも参加できる簡単なフォーマット」が生まれると、一気にユーザー投稿が増えるケースがあります。

    また、「癒やし(chữa lành)」というキーワードが若者の間で注目された事例などを見ても、SNS上の流行は単なる娯楽ではなく、その時々の若者の心理や価値観を映すものとして見ることができます。

    日本企業のベトナムマーケティングにも参考になる

    このトレンド自体に日本企業が無理に乗る必要はありません。ただ、ベトナム向けSNSマーケティングを考えるうえでは、いくつか参考になる点があります。

    • 参加方法が一目で分かるコンテンツは拡散しやすい
    • 完成度よりも「自分もやってみたい」と思わせるフォーマットが重要
    • 商品説明だけではなく、ユーザー自身の思い出やストーリーを主役にできる
    • 海外発トレンドでも、ベトナム人の日常に置き換えることで急速にローカライズされる

    例えば、10年以上ベトナムで事業を展開しているブランドであれば、「2016年のベトナムと2026年のベトナム」「10年前の商品と現在の商品」といった切り口も考えられます。ただし、流行しているからと無理に企業アカウントが参加すると広告色が強くなってしまうため、ブランドとの相性を見ることが重要です。

    ベトナムのSNSを見ていると、こうした小さなトレンドから若者の感覚や消費者心理が垣間見えることがあります。市場調査というと統計データに目が行きがちですが、日々のTikTok、Facebook、Instagramや現地メディアを観察することも、生活者を理解するうえではかなり重要です。

    ベトナムのSNSトレンドは引き続き要注目

    「2026年は新しい2016年」という言葉だけを見ると、単なる懐古ブームにも見えます。しかしベトナムでの広がりを追ってみると、昔の写真の投稿から、10年前の自分との対話、人生の振り返りへとコンテンツが変化しており、SNSならではの面白い現象になっています。

    日本企業にとっても、ベトナムの若者が「何を面白いと感じ、なぜ投稿したくなるのか」を知る一つの材料になりそうです。

    このようなベトナム国内のちょっとした流行についても、今後引き続きご紹介していきたいと思います。

  • ベトナムにも「NEET」登場? 若者10%が働かず学ばず訓練も受けず

    ベトナムにも「NEET」登場? 若者10%が働かず学ばず訓練も受けず

    ベトナム国内のニュースを見ていると、ときどき「これは日本企業にとっても少し気になるな」という記事があります。今回、ベトナムの若者の雇用について興味深い記事が掲載されていましたので、ご紹介します。

    ベトナムの若者向けメディア「Kenh14」に2026年9月、「ベトナムには140万人の“3つのなし”の若者がいる」という内容の記事が掲載されました。ここでいう「3つのなし」とは、仕事をしていない、学校に通っていない、職業訓練も受けていない若者のことです。

    英語では「NEET(Not in Education, Employment, or Training)」と呼ばれる層ですね。日本でも知られている言葉ですが、成長を続け、若い労働力が豊富というイメージがあるベトナムで「約140万人」という数字が出ているのは興味深いところです。

    今回紹介するベトナム語の元記事はこちらです。Việt Nam có 1,4 triệu thanh niên “ba không”

    ベトナムに140万人の「3つのなし」の若者

    記事が紹介しているベトナム統計局のデータによると、2026年第2四半期、15〜24歳の若者のうち、仕事をせず、学校にも通わず、職業訓練にも参加していない人は約140万人でした。若者全体に占める割合では10.0%に相当します。

    単純化すると、15〜24歳の若者のおよそ10人に1人が、就業・就学・職業訓練のいずれにも参加していない計算になります。

    さらに細かく見ると、農村部では11.5%、都市部では7.8%となっており、女性では11.6%、男性では8.5%でした。ベトナム国内でも地域や性別によって状況が異なることが分かります。

    若年失業率は8.67%、全体とは少し違う景色

    もう一つ気になった数字が若年失業率です。2026年第2四半期の15〜24歳の失業率は8.67%でした。

    一方、同じ時期のベトナム全体の労働年齢人口における失業率は2.23%です。つまり、ベトナム全体を見ると労働市場は比較的安定しているものの、若い世代だけを見ると事情が少し異なります。

    「ベトナムは人口が若く、労働力も豊富」という説明は、日本企業のベトナム進出でもよく聞きます。もちろんそれ自体が間違っているわけではありませんが、若者が多いことと、企業が必要とする人材を簡単に採用できることは同じではない、という点は押さえておく必要がありそうです。

    「仕事があるか」から「どんな仕事か」へ

    今回の記事で面白かったのは、単純に失業率だけを問題にしているわけではない点です。

    記事では2024年の若者の雇用について、57.5%が非公式雇用であり、社会保険に加入している若者は41.4%だったというデータも紹介されています。非公式雇用とは、社会保険などによる十分な保護が得られにくい働き方を含む雇用です。

    つまり、「とりあえず働いている」という数字だけでは、若者の労働市場を十分に説明できないわけです。安定性があるか、仕事を通じてスキルを身につけられるか、その後のキャリアにつながるか、といった雇用の質も重要になっています。

    これはベトナムで人を採用する日本企業にとっても、かなり実務的な話だと思います。単に給与を提示して人を集めるだけではなく、「この会社で何を学べるのか」「数年後にどんな仕事ができるようになるのか」を若い求職者に見せる必要性が高まっているのかもしれません。

    AIやデジタル化で若者に求められるスキルも変化

    今回の記事の背景となったのは、2026年9月18日にハノイで開催された、若者の雇用と労働市場をテーマとするイベントです。ILO(国際労働機関)ベトナム事務所とAcademy of Journalism and Communicationが開催しました。

    ILOは、デジタル化やAI、グリーントランジション、人口構造の変化、グローバルサプライチェーンの再編によって、企業が必要とする人材やスキルが変化していると指摘しています。

    つまり、問題は「若者向けの仕事を増やせば解決する」というほど単純ではありません。大学や職業教育で身につけたスキルと企業側が必要とするスキルが合わなければ、一方では仕事を探している若者が多いのに、もう一方では企業が「人が採れない」と悩む状態も起こります。

    学校と企業をどうつなぐか

    元記事では、学校と企業との接点を増やすことも重要なテーマとして紹介されています。

    大学側としても、「卒業生の80%、90%が就職した」という数字だけを見るのではなく、学生が質の高い仕事にアクセスできるよう企業との連携を強化する必要がある、という考え方です。インターンシップなどを通じて、学生のうちから実際の仕事を経験することも推奨されています。

    これはベトナムで若手採用を行う日系企業にも利用できる方法です。新卒採用のタイミングだけで候補者を探すより、大学との連携、インターン受け入れ、企業説明会などを通じて早い段階から接点を持つほうが、自社に合う若手人材を発見しやすくなる可能性があります。

    日本企業にとっても「若い人口=採用しやすい」とは限らない

    ベトナムは現在も5,000万人を超える規模の労働力人口を抱えています。そのため「人材がいない国」という話ではもちろんありません。

    むしろ今回のデータから見えてくるのは、人口の量と企業が求める人材の供給にはギャップがあり得るということです。

    特にこれからAIやデジタル化がさらに進めば、語学力、ITスキル、営業力、マネジメント能力など、企業側が求める能力も変わります。ベトナムに進出する日本企業としても、完成された人材を採用市場から探すだけでなく、採用後に育成することを前提に人事戦略を組み立てる必要性は高まっていきそうです。

    • 大学・教育機関との接点を増やす
    • 学生向けインターンシップを活用する
    • 仕事内容だけでなくキャリアパスを提示する
    • 若手社員向けの研修・スキルアップ制度を整える
    • 給与だけでなく「成長できる職場」であることを伝える

    こうした取り組みは、単なる採用人数の確保だけでなく、若手社員の定着にもつながる可能性があります。

    若者の消費を見るうえでも興味深いデータ

    今回のニュースは雇用の記事ですが、個人的には消費市場を見るうえでも興味深いと感じました。

    ベトナムの若い世代というと、SNS、EC、旅行、カフェ、キャッシュレス決済など、新しい消費を牽引する存在として語られることが多くあります。一方で、その全員が順調に所得を増やしているわけではなく、学校から仕事への移行に苦労している層も一定数存在します。

    「ベトナムのZ世代」という大きな括りだけで消費者像を作るのではなく、所得、職業、居住地域、ライフステージなどによって細かく見ていくことが、今後ますます重要になるでしょう。

    まとめ

    今回は、ベトナム国内メディアで見つけた「140万人の“3つのなし”の若者」という興味深い記事をご紹介しました。

    2026年第2四半期には、15〜24歳の約140万人、若者全体の10.0%が仕事・就学・職業訓練のいずれにも参加していないとされています。また若年失業率は8.67%で、ベトナム全体の失業率よりもかなり高い水準です。

    ただし、これを単純に「ベトナムの若者が働かなくなっている」と捉えるのは適切ではないでしょう。むしろ学校から仕事への移行、企業側とのスキルミスマッチ、雇用の質など、成長するベトナム経済の次の課題が見えてきたデータ、と捉えるほうがよさそうです。

    ベトナムで採用や事業展開を行う日本企業にとっても、「若い人口が多いから人材を採りやすい」と考えるのではなく、採用・教育・定着までをセットで考える必要がありそうです。

  • ベトナム小売市場は「店舗数」から「信頼」競争へ

    ベトナム小売市場は「店舗数」から「信頼」競争へ

    ベトナム小売企業がアジアTop100で存在感、家電・IT系7社がランクイン

    ベトナムの小売企業が、アジアの小売市場で存在感を高めています。2026年9月29日にVietnam Investment Review(VIR)が報じたところによると、Inside Retail Asiaが発表した「Brand Conviction Index: Asia’s Top 100 Retailers」に、ベトナムの家電・IT関連小売企業7社がランクインしました。

    なかでもFPT Shopが総合11位、Điện Máy Xanh(ディエン・マイ・サイン)が12位、Thế Giới Di Động(テー・ゾイ・ジー・ドン)が14位となり、ベトナム企業3社がアジア全体のTop15に入っています。単純な店舗数や売上規模ではなく、「消費者からどれだけ信頼され、他の人にも勧めたいと思われているか」という観点で高い評価を受けた点が今回のランキングの特徴です。

    日本企業にとっても、この結果はベトナムの小売市場を考えるうえで興味深いものです。ベトナムでは販路を確保するだけでなく、店舗、オンライン、購入後のサポートまで含めて「どのように消費者との信頼関係をつくるか」が重要な競争軸になっていることが見えてきます。

    「Brand Conviction Index」とは?売上規模とは違う小売ランキング

    Brand Conviction Indexは、Inside Retail AsiaがYouGov BrandIndexのデータを活用して作成した小売ブランドのランキングです。2026年版では、アジア11市場の7万人を超える消費者へのインタビューと、2026年5月31日までの12カ月間にわたる継続的なデータが使われています。

    特徴的なのは、現在の顧客数だけを見るランキングではないことです。主に「現在そのブランドで購入している人」「今後購入を検討している人」「他の人にそのブランドを勧めたい人」という消費者との関係性を捉えています。

    そのため、大規模な企業が必ずしも上位になるとは限りません。現在の顧客だけでなく、そのブランドを評価している潜在顧客や推奨者がどの程度存在するかを見ることで、ブランドへの信頼や将来的な需要の可能性を捉えようとする指標です。

    今回のランキングについては、Vietnam Investment Reviewの記事およびInside Retail Asiaが公表したBrand Conviction Indexを参考にしています。

    ベトナム勢は家電・IT小売で特に強い

    今回とくに注目したいのが、ベトナム企業の強さが家電・IT・携帯電話などの小売カテゴリーに集中している点です。

    • 11位:FPT Shop
    • 12位:Điện Máy Xanh
    • 14位:Thế Giới Di Động
    • 30位:Viettel Store
    • 53位:Nguyễn Kim
    • 71位:Chợ Lớn Electronics Supermarket
    • 100位:MediaMart

    Inside Retail Asiaによると、ランキングに入った家電・白物家電小売10社のうち、7社をベトナム企業が占めました。アジア全体で見ても、ベトナムの家電量販・IT小売企業が強い存在感を示していることになります。

    また、家電専門店だけではありません。ベトナムでハイパーマーケットを展開するGO!も総合73位に入りました。オンラインモール、専門店、大型スーパーなど複数の小売フォーマットで、消費者との信頼関係が競争力として評価されています。

    なぜベトナムの家電小売は消費者から支持されているのか

    今回の結果を見るうえで重要なのは、家電やスマートフォンが日用品とは異なり、比較的購入単価が高く、購入前の検討時間も長い商品であることです。そのため消費者は、価格だけでなく「本物なのか」「保証は受けられるのか」「故障した場合に対応してくれるのか」といった要素も含めて販売店を選びます。

    1.全国規模の実店舗網

    FPT Shop、Điện Máy Xanh、Thế Giới Di Độngなどは、ベトナム各地に店舗網を展開しています。実店舗が身近に存在することで、商品を直接確認できるだけでなく、購入後に相談できるという安心感にもつながります。

    ベトナム市場ではECが拡大する一方、実店舗が持つ役割がなくなったわけではありません。とくに家電やIT製品のように説明、比較、保証、設置などが必要になる商品では、オンラインとオフラインを組み合わせた販売体制が強みになります。

    MAI Internationalでは、ベトナムの大型小売やチェーンストアなどへの展開を検討する企業向けに、MT(モダントレード)でのマーケティングサポートを提供しています。

    2.デジタル上でも消費者との接点をつくる

    もう一つの特徴が、実店舗を持つ小売企業であってもデジタル接点を積極的に活用していることです。消費者は店舗へ行く前にWebサイトやSNS、動画、ECプラットフォームなどで商品情報や価格、レビューを確認するようになっています。

    つまり「店舗かECか」という二者択一ではありません。オンラインで商品を知り、比較したうえで店舗を訪れたり、店舗で確認してからオンラインで購入したりと、購買行動は複数のチャネルを行き来しています。

    ベトナムEC市場ではShopeeに加えてTikTok Shopの存在感も急速に高まっており、動画やライブ配信から購買につながる行動も広がっています。詳しくは「TikTok ShopがShopeeを猛追、ベトナムEC勢力図」でも解説しています。

    3.販売後のサービスまでがブランド体験

    家電小売の場合、商品を販売した時点で顧客との関係が終わるわけではありません。配送、設置、保証、修理、問い合わせ対応など、購入後にも複数の接点があります。

    Inside Retail Asiaも、ベトナムの家電小売企業について、実店舗の存在感だけでなく、デジタルでの顧客接点やアフターサービスが消費者からの評価につながっていると分析しています。

    これは日本企業がベトナムで商品を販売する際にも重要です。品質の高い日本製品であっても、「どこで問い合わせるのか」「不具合時に誰が対応するのか」が分かりにくければ、購入のハードルが上がります。商品そのものだけでなく、購入前後の体験まで含めて設計する必要があります。

    日本企業がベトナム小売市場で注目すべき3つのポイント

    ポイント1.「取扱店舗を増やす」だけをゴールにしない

    ベトナムへ進出する日本企業からは、「まず大手スーパーに商品を置きたい」「大手ECに出品したい」という相談がよくあります。もちろん販路の確保は重要ですが、店頭に置いただけで自然に商品が売れるとは限りません。

    今回のランキングが示しているのは、消費者から認知され、比較対象に入り、実際に購入され、さらに他人へ推奨されるところまでブランドとの関係を作っている企業が強いということです。

    そのため販路開拓と同時に、認知施策、商品説明、店頭プロモーション、SNS、レビュー、購入後サポートまで一連の流れとして考える必要があります。

    ポイント2.商品カテゴリーによってMT・TT・ECの組み合わせを変える

    ベトナムの流通市場では、大型スーパーやショッピングセンター、家電量販店などのMT(Modern Trade)だけでなく、個人商店を中心としたTT(Traditional Trade)、さらにECも重要な販売チャネルです。

    ただし、どのチャネルを優先すべきかは商品によって異なります。家電、化粧品、食品、日用品、BtoB商材では、消費者が商品を知り、比較し、購入するプロセスがそれぞれ違うためです。

    最初から全国展開を目指すのではなく、対象顧客、地域、価格帯、競合商品の販売状況を調査し、適したチャネルを絞り込む方が現実的です。

    ポイント3.「ベトナムで誰が売るか」をブランド戦略の一部として考える

    今回上位に入ったFPT ShopやĐiện Máy Xanhなどを見ると、小売企業そのものが消費者から強いブランドとして認識されています。

    これは日本企業にとって、ディストリビューターや小売チェーンの選定が単なる物流・営業上の問題ではないことを意味します。どの店舗で販売されるか、誰が商品説明をするか、購入後に誰が対応するかによって、商品ブランドの印象も変わります。

    特にベトナム進出初期では、販売数量だけでパートナーを評価するのではなく、対象顧客との相性、営業地域、店舗網、EC対応、マーケティング力、アフターサービス体制などを確認することが重要です。

    ベトナム小売市場は「規模」だけでなく「信頼」を競う段階へ

    今回発表されたBrand Conviction Indexでは、ベトナムの家電・IT小売企業がアジア全体でも高い評価を得ました。FPT Shop、Điện Máy Xanh、Thế Giới Di Độngの3社がTop15に入ったことは、ベトナム国内企業が店舗網を拡大してきただけでなく、消費者とのブランド関係を構築してきたことを示す一つの材料といえます。

    一方、日本企業が注目すべきなのはランキングそのものよりも、その背景です。これからのベトナム市場では「どこで売るか」に加え、「どう知ってもらい、どう選ばれ、購入後までどう信頼を維持するか」という設計がさらに重要になります。

    MAI Internationalでは、市場調査から販売チャネルの選定、MT・TTでの販路開拓、EC・オンラインテストマーケティングまで、ベトナム市場への参入を支援しています。いきなり大規模な販売網を構築するのではなく、小規模に市場反応を確認したい場合には、オンラインテストマーケティングを活用する方法もあります。

    参考情報

    本記事は、2026年9月29日にVietnam Investment Reviewが公開した「Vietnamese retailers make strong debut in Asia’s Top 100 ranking」およびInside Retail Asiaの「Brand Conviction Index: Asia’s Top 100 Retailers」の公開情報をもとに、MAI Internationalが日本企業向けの視点を加えて整理したものです。

    ※ランキング、企業情報等は記事公開時点の公開情報をもとにしています。各社の店舗数、事業内容、ランキング等は今後変更される可能性があります。