ベトナムにも「NEET」登場? 若者10%が働かず学ばず訓練も受けず

ベトナム国内のニュースを見ていると、ときどき「これは日本企業にとっても少し気になるな」という記事があります。今回、ベトナムの若者の雇用について興味深い記事が掲載されていましたので、ご紹介します。

ベトナムの若者向けメディア「Kenh14」に2026年9月、「ベトナムには140万人の“3つのなし”の若者がいる」という内容の記事が掲載されました。ここでいう「3つのなし」とは、仕事をしていない、学校に通っていない、職業訓練も受けていない若者のことです。

英語では「NEET(Not in Education, Employment, or Training)」と呼ばれる層ですね。日本でも知られている言葉ですが、成長を続け、若い労働力が豊富というイメージがあるベトナムで「約140万人」という数字が出ているのは興味深いところです。

今回紹介するベトナム語の元記事はこちらです。Việt Nam có 1,4 triệu thanh niên “ba không”

ベトナムに140万人の「3つのなし」の若者

記事が紹介しているベトナム統計局のデータによると、2026年第2四半期、15〜24歳の若者のうち、仕事をせず、学校にも通わず、職業訓練にも参加していない人は約140万人でした。若者全体に占める割合では10.0%に相当します。

単純化すると、15〜24歳の若者のおよそ10人に1人が、就業・就学・職業訓練のいずれにも参加していない計算になります。

さらに細かく見ると、農村部では11.5%、都市部では7.8%となっており、女性では11.6%、男性では8.5%でした。ベトナム国内でも地域や性別によって状況が異なることが分かります。

若年失業率は8.67%、全体とは少し違う景色

もう一つ気になった数字が若年失業率です。2026年第2四半期の15〜24歳の失業率は8.67%でした。

一方、同じ時期のベトナム全体の労働年齢人口における失業率は2.23%です。つまり、ベトナム全体を見ると労働市場は比較的安定しているものの、若い世代だけを見ると事情が少し異なります。

「ベトナムは人口が若く、労働力も豊富」という説明は、日本企業のベトナム進出でもよく聞きます。もちろんそれ自体が間違っているわけではありませんが、若者が多いことと、企業が必要とする人材を簡単に採用できることは同じではない、という点は押さえておく必要がありそうです。

「仕事があるか」から「どんな仕事か」へ

今回の記事で面白かったのは、単純に失業率だけを問題にしているわけではない点です。

記事では2024年の若者の雇用について、57.5%が非公式雇用であり、社会保険に加入している若者は41.4%だったというデータも紹介されています。非公式雇用とは、社会保険などによる十分な保護が得られにくい働き方を含む雇用です。

つまり、「とりあえず働いている」という数字だけでは、若者の労働市場を十分に説明できないわけです。安定性があるか、仕事を通じてスキルを身につけられるか、その後のキャリアにつながるか、といった雇用の質も重要になっています。

これはベトナムで人を採用する日本企業にとっても、かなり実務的な話だと思います。単に給与を提示して人を集めるだけではなく、「この会社で何を学べるのか」「数年後にどんな仕事ができるようになるのか」を若い求職者に見せる必要性が高まっているのかもしれません。

AIやデジタル化で若者に求められるスキルも変化

今回の記事の背景となったのは、2026年9月18日にハノイで開催された、若者の雇用と労働市場をテーマとするイベントです。ILO(国際労働機関)ベトナム事務所とAcademy of Journalism and Communicationが開催しました。

ILOは、デジタル化やAI、グリーントランジション、人口構造の変化、グローバルサプライチェーンの再編によって、企業が必要とする人材やスキルが変化していると指摘しています。

つまり、問題は「若者向けの仕事を増やせば解決する」というほど単純ではありません。大学や職業教育で身につけたスキルと企業側が必要とするスキルが合わなければ、一方では仕事を探している若者が多いのに、もう一方では企業が「人が採れない」と悩む状態も起こります。

学校と企業をどうつなぐか

元記事では、学校と企業との接点を増やすことも重要なテーマとして紹介されています。

大学側としても、「卒業生の80%、90%が就職した」という数字だけを見るのではなく、学生が質の高い仕事にアクセスできるよう企業との連携を強化する必要がある、という考え方です。インターンシップなどを通じて、学生のうちから実際の仕事を経験することも推奨されています。

これはベトナムで若手採用を行う日系企業にも利用できる方法です。新卒採用のタイミングだけで候補者を探すより、大学との連携、インターン受け入れ、企業説明会などを通じて早い段階から接点を持つほうが、自社に合う若手人材を発見しやすくなる可能性があります。

日本企業にとっても「若い人口=採用しやすい」とは限らない

ベトナムは現在も5,000万人を超える規模の労働力人口を抱えています。そのため「人材がいない国」という話ではもちろんありません。

むしろ今回のデータから見えてくるのは、人口の量と企業が求める人材の供給にはギャップがあり得るということです。

特にこれからAIやデジタル化がさらに進めば、語学力、ITスキル、営業力、マネジメント能力など、企業側が求める能力も変わります。ベトナムに進出する日本企業としても、完成された人材を採用市場から探すだけでなく、採用後に育成することを前提に人事戦略を組み立てる必要性は高まっていきそうです。

  • 大学・教育機関との接点を増やす
  • 学生向けインターンシップを活用する
  • 仕事内容だけでなくキャリアパスを提示する
  • 若手社員向けの研修・スキルアップ制度を整える
  • 給与だけでなく「成長できる職場」であることを伝える

こうした取り組みは、単なる採用人数の確保だけでなく、若手社員の定着にもつながる可能性があります。

若者の消費を見るうえでも興味深いデータ

今回のニュースは雇用の記事ですが、個人的には消費市場を見るうえでも興味深いと感じました。

ベトナムの若い世代というと、SNS、EC、旅行、カフェ、キャッシュレス決済など、新しい消費を牽引する存在として語られることが多くあります。一方で、その全員が順調に所得を増やしているわけではなく、学校から仕事への移行に苦労している層も一定数存在します。

「ベトナムのZ世代」という大きな括りだけで消費者像を作るのではなく、所得、職業、居住地域、ライフステージなどによって細かく見ていくことが、今後ますます重要になるでしょう。

まとめ

今回は、ベトナム国内メディアで見つけた「140万人の“3つのなし”の若者」という興味深い記事をご紹介しました。

2026年第2四半期には、15〜24歳の約140万人、若者全体の10.0%が仕事・就学・職業訓練のいずれにも参加していないとされています。また若年失業率は8.67%で、ベトナム全体の失業率よりもかなり高い水準です。

ただし、これを単純に「ベトナムの若者が働かなくなっている」と捉えるのは適切ではないでしょう。むしろ学校から仕事への移行、企業側とのスキルミスマッチ、雇用の質など、成長するベトナム経済の次の課題が見えてきたデータ、と捉えるほうがよさそうです。

ベトナムで採用や事業展開を行う日本企業にとっても、「若い人口が多いから人材を採りやすい」と考えるのではなく、採用・教育・定着までをセットで考える必要がありそうです。

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