ベトナム小売市場は「店舗数」から「信頼」競争へ

ベトナム小売企業がアジアTop100で存在感、家電・IT系7社がランクイン

ベトナムの小売企業が、アジアの小売市場で存在感を高めています。2026年9月29日にVietnam Investment Review(VIR)が報じたところによると、Inside Retail Asiaが発表した「Brand Conviction Index: Asia’s Top 100 Retailers」に、ベトナムの家電・IT関連小売企業7社がランクインしました。

なかでもFPT Shopが総合11位、Điện Máy Xanh(ディエン・マイ・サイン)が12位、Thế Giới Di Động(テー・ゾイ・ジー・ドン)が14位となり、ベトナム企業3社がアジア全体のTop15に入っています。単純な店舗数や売上規模ではなく、「消費者からどれだけ信頼され、他の人にも勧めたいと思われているか」という観点で高い評価を受けた点が今回のランキングの特徴です。

日本企業にとっても、この結果はベトナムの小売市場を考えるうえで興味深いものです。ベトナムでは販路を確保するだけでなく、店舗、オンライン、購入後のサポートまで含めて「どのように消費者との信頼関係をつくるか」が重要な競争軸になっていることが見えてきます。

「Brand Conviction Index」とは?売上規模とは違う小売ランキング

Brand Conviction Indexは、Inside Retail AsiaがYouGov BrandIndexのデータを活用して作成した小売ブランドのランキングです。2026年版では、アジア11市場の7万人を超える消費者へのインタビューと、2026年5月31日までの12カ月間にわたる継続的なデータが使われています。

特徴的なのは、現在の顧客数だけを見るランキングではないことです。主に「現在そのブランドで購入している人」「今後購入を検討している人」「他の人にそのブランドを勧めたい人」という消費者との関係性を捉えています。

そのため、大規模な企業が必ずしも上位になるとは限りません。現在の顧客だけでなく、そのブランドを評価している潜在顧客や推奨者がどの程度存在するかを見ることで、ブランドへの信頼や将来的な需要の可能性を捉えようとする指標です。

今回のランキングについては、Vietnam Investment Reviewの記事およびInside Retail Asiaが公表したBrand Conviction Indexを参考にしています。

ベトナム勢は家電・IT小売で特に強い

今回とくに注目したいのが、ベトナム企業の強さが家電・IT・携帯電話などの小売カテゴリーに集中している点です。

  • 11位:FPT Shop
  • 12位:Điện Máy Xanh
  • 14位:Thế Giới Di Động
  • 30位:Viettel Store
  • 53位:Nguyễn Kim
  • 71位:Chợ Lớn Electronics Supermarket
  • 100位:MediaMart

Inside Retail Asiaによると、ランキングに入った家電・白物家電小売10社のうち、7社をベトナム企業が占めました。アジア全体で見ても、ベトナムの家電量販・IT小売企業が強い存在感を示していることになります。

また、家電専門店だけではありません。ベトナムでハイパーマーケットを展開するGO!も総合73位に入りました。オンラインモール、専門店、大型スーパーなど複数の小売フォーマットで、消費者との信頼関係が競争力として評価されています。

なぜベトナムの家電小売は消費者から支持されているのか

今回の結果を見るうえで重要なのは、家電やスマートフォンが日用品とは異なり、比較的購入単価が高く、購入前の検討時間も長い商品であることです。そのため消費者は、価格だけでなく「本物なのか」「保証は受けられるのか」「故障した場合に対応してくれるのか」といった要素も含めて販売店を選びます。

1.全国規模の実店舗網

FPT Shop、Điện Máy Xanh、Thế Giới Di Độngなどは、ベトナム各地に店舗網を展開しています。実店舗が身近に存在することで、商品を直接確認できるだけでなく、購入後に相談できるという安心感にもつながります。

ベトナム市場ではECが拡大する一方、実店舗が持つ役割がなくなったわけではありません。とくに家電やIT製品のように説明、比較、保証、設置などが必要になる商品では、オンラインとオフラインを組み合わせた販売体制が強みになります。

MAI Internationalでは、ベトナムの大型小売やチェーンストアなどへの展開を検討する企業向けに、MT(モダントレード)でのマーケティングサポートを提供しています。

2.デジタル上でも消費者との接点をつくる

もう一つの特徴が、実店舗を持つ小売企業であってもデジタル接点を積極的に活用していることです。消費者は店舗へ行く前にWebサイトやSNS、動画、ECプラットフォームなどで商品情報や価格、レビューを確認するようになっています。

つまり「店舗かECか」という二者択一ではありません。オンラインで商品を知り、比較したうえで店舗を訪れたり、店舗で確認してからオンラインで購入したりと、購買行動は複数のチャネルを行き来しています。

ベトナムEC市場ではShopeeに加えてTikTok Shopの存在感も急速に高まっており、動画やライブ配信から購買につながる行動も広がっています。詳しくは「TikTok ShopがShopeeを猛追、ベトナムEC勢力図」でも解説しています。

3.販売後のサービスまでがブランド体験

家電小売の場合、商品を販売した時点で顧客との関係が終わるわけではありません。配送、設置、保証、修理、問い合わせ対応など、購入後にも複数の接点があります。

Inside Retail Asiaも、ベトナムの家電小売企業について、実店舗の存在感だけでなく、デジタルでの顧客接点やアフターサービスが消費者からの評価につながっていると分析しています。

これは日本企業がベトナムで商品を販売する際にも重要です。品質の高い日本製品であっても、「どこで問い合わせるのか」「不具合時に誰が対応するのか」が分かりにくければ、購入のハードルが上がります。商品そのものだけでなく、購入前後の体験まで含めて設計する必要があります。

日本企業がベトナム小売市場で注目すべき3つのポイント

ポイント1.「取扱店舗を増やす」だけをゴールにしない

ベトナムへ進出する日本企業からは、「まず大手スーパーに商品を置きたい」「大手ECに出品したい」という相談がよくあります。もちろん販路の確保は重要ですが、店頭に置いただけで自然に商品が売れるとは限りません。

今回のランキングが示しているのは、消費者から認知され、比較対象に入り、実際に購入され、さらに他人へ推奨されるところまでブランドとの関係を作っている企業が強いということです。

そのため販路開拓と同時に、認知施策、商品説明、店頭プロモーション、SNS、レビュー、購入後サポートまで一連の流れとして考える必要があります。

ポイント2.商品カテゴリーによってMT・TT・ECの組み合わせを変える

ベトナムの流通市場では、大型スーパーやショッピングセンター、家電量販店などのMT(Modern Trade)だけでなく、個人商店を中心としたTT(Traditional Trade)、さらにECも重要な販売チャネルです。

ただし、どのチャネルを優先すべきかは商品によって異なります。家電、化粧品、食品、日用品、BtoB商材では、消費者が商品を知り、比較し、購入するプロセスがそれぞれ違うためです。

最初から全国展開を目指すのではなく、対象顧客、地域、価格帯、競合商品の販売状況を調査し、適したチャネルを絞り込む方が現実的です。

ポイント3.「ベトナムで誰が売るか」をブランド戦略の一部として考える

今回上位に入ったFPT ShopやĐiện Máy Xanhなどを見ると、小売企業そのものが消費者から強いブランドとして認識されています。

これは日本企業にとって、ディストリビューターや小売チェーンの選定が単なる物流・営業上の問題ではないことを意味します。どの店舗で販売されるか、誰が商品説明をするか、購入後に誰が対応するかによって、商品ブランドの印象も変わります。

特にベトナム進出初期では、販売数量だけでパートナーを評価するのではなく、対象顧客との相性、営業地域、店舗網、EC対応、マーケティング力、アフターサービス体制などを確認することが重要です。

ベトナム小売市場は「規模」だけでなく「信頼」を競う段階へ

今回発表されたBrand Conviction Indexでは、ベトナムの家電・IT小売企業がアジア全体でも高い評価を得ました。FPT Shop、Điện Máy Xanh、Thế Giới Di Độngの3社がTop15に入ったことは、ベトナム国内企業が店舗網を拡大してきただけでなく、消費者とのブランド関係を構築してきたことを示す一つの材料といえます。

一方、日本企業が注目すべきなのはランキングそのものよりも、その背景です。これからのベトナム市場では「どこで売るか」に加え、「どう知ってもらい、どう選ばれ、購入後までどう信頼を維持するか」という設計がさらに重要になります。

MAI Internationalでは、市場調査から販売チャネルの選定、MT・TTでの販路開拓、EC・オンラインテストマーケティングまで、ベトナム市場への参入を支援しています。いきなり大規模な販売網を構築するのではなく、小規模に市場反応を確認したい場合には、オンラインテストマーケティングを活用する方法もあります。

参考情報

本記事は、2026年9月29日にVietnam Investment Reviewが公開した「Vietnamese retailers make strong debut in Asia’s Top 100 ranking」およびInside Retail Asiaの「Brand Conviction Index: Asia’s Top 100 Retailers」の公開情報をもとに、MAI Internationalが日本企業向けの視点を加えて整理したものです。

※ランキング、企業情報等は記事公開時点の公開情報をもとにしています。各社の店舗数、事業内容、ランキング等は今後変更される可能性があります。

Consulting

ベトナムビジネスの次の一手を一緒に整理しませんか

市場調査、販路開拓、調達先探索、現地パートナー選定まで、記事内容に関連する具体的なご相談を承ります。

まずは相談する