Standard Chartered、ベトナムの7〜9月期GDPを8.7%成長と予測
ベトナム経済は、製造業と貿易を中心に引き続き高い成長ペースを維持するとの見方が出ています。
英金融大手Standard Charteredは最新の経済見通しで、2026年7〜9月期のベトナムGDP成長率を前年同期比8.7%と予測しました。4〜6月期の8.4%からさらに成長が加速するとの見方です。
背景として挙げられているのが、工業生産の拡大、活発な貿易、そして堅調な国内需要です。一方、世界経済や貿易環境を巡る不確実性は依然として残っており、高成長を維持できるかは外需と政策支援の両面を見る必要があります。
出典:Tuoi Tre News、Standard Chartered予測(2026年9月29日報道)
製造業と貿易がベトナム経済の成長をけん引
Standard Charteredは、2026年9月の経済指標についても、製造業と貿易の改善が続くと予測しています。
特に鉱工業生産は前年同期比13.2%増となる見通しです。電子機器や機械、繊維・縫製など輸出型製造業を多く抱えるベトナムでは、製造活動の拡大がGDPや雇用、物流需要など幅広い分野に波及します。
貿易も引き続き高い伸びが見込まれています。Standard Charteredの予測では、2026年7〜9月期の輸出は前年同期比27.2%増、輸入は同40%増となる見通しです。
- 7〜9月期GDP成長率予測:前年同期比8.7%
- 鉱工業生産:前年同期比13.2%増
- 輸出:前年同期比27.2%増
- 輸入:前年同期比40%増
- 9月のインフレ率予測:前年同月比4.5%
ここで注目したいのが、輸出以上に輸入が大きく増えている点です。輸入増というと貿易収支の悪化に目が向きやすいですが、ベトナムの場合、製造業で使用する機械設備、電子部品、原材料などを海外から調達して国内で加工し、再び輸出するサプライチェーンが大きな比重を占めています。
そのため輸入の増加は、単純な消費拡大だけでなく、国内製造業の生産活動が活発化していることを示す材料としても見る必要があります。
2026年通年GDPは9.5%成長予測、下半期は10.6%の見通し
Standard Charteredは、現在の経済動向を踏まえ、2026年後半もベトナム経済の成長モメンタムが続くとみています。
同行は2026年下半期のGDP成長率を前年同期比10.6%と予測し、2026年通年についても9.5%のGDP成長予測を維持しました。
Standard Charteredのタイ・ベトナム担当シニアエコノミスト、Tim Leelahaphan氏は、ベトナム経済について、堅調な国内需要、工業生産の拡大、活発な貿易活動が経済の耐久力を支えているとの見方を示しています。
一方で、世界経済や国際貿易を取り巻く外部環境には不透明感が残ります。今後は輸出数量だけではなく、主要輸出先の景気、為替、原材料価格、各国の通商政策なども企業収益に影響する可能性があります。
インフレ率は4.5%予測、成長と物価のバランスにも注目
高いGDP成長と同時にチェックしておきたいのが物価です。Standard Charteredは、2026年9月のインフレ率を前年同月比4.5%と予測しています。
経済成長が加速すれば、賃金や物流費、サービス価格などにも上昇圧力がかかりやすくなります。特にベトナムで工場や販売拠点を持つ日本企業にとっては、「GDPが伸びているか」だけではなく、人件費・原材料費・物流費など事業コストがどの程度上昇しているかを合わせて確認することが重要です。
日本企業が注目したい3つのポイント
1.製造業向けBtoB市場の拡大余地
鉱工業生産が2桁成長を続ける場合、完成品メーカーだけでなく、その周辺にある部品、設備、メンテナンス、物流、検査、ITなど幅広いBtoB市場にも需要が波及します。
ベトナム市場を検討する日本企業にとっては、完成品の販売だけを見るのではなく、現地メーカーや外資系工場の調達ニーズを把握することが重要です。特に工業団地単位で企業集積や調達構造を調べることで、具体的な営業先が見つかるケースがあります。
2.輸入40%増が示すサプライチェーン需要
輸入の高い伸びは、ベトナム国内で使用される生産財や原材料への需要増加につながる可能性があります。
日本企業にとっては、日本からベトナムへの直接輸出だけでなく、ASEAN域内からの供給、現地代理店経由、ベトナム国内生産など、複数の供給ルートを比較するタイミングともいえます。
市場規模だけで判断するのではなく、関税、物流費、リードタイム、在庫負担、現地認証などを含めた総コストで販売モデルを設計することが重要です。
3.輸出型経済だけでなく「内需」にも注目
今回のStandard Charteredの見通しでは、製造業や貿易だけでなく、堅調な国内需要も成長要因として挙げられています。
ベトナムを「低コストの生産拠点」とだけ見る時代から、国内市場も含めて事業戦略を検討する重要性が高まっています。所得水準や都市化、流通チャネル、消費者ニーズは地域や商品カテゴリーによって大きく異なるため、参入前にはターゲット市場を細かく確認する必要があります。
ベトナム市場では「高成長」の中身を見ることが重要
Standard Charteredが予測する2026年通年9.5%というGDP成長率は、ベトナム経済の強い成長モメンタムを示す数字です。しかし、企業の事業機会を判断する際にはGDP成長率だけを見るのでは十分ではありません。
どの産業が伸びているのか、輸入されている商品は何か、どの地域に工場や消費市場が集まっているのかまで落とし込むことで、初めて具体的な市場機会が見えてきます。
特に製造業では、最終製品の輸出増加から、その上流にある部材、設備、物流、IT、人材などへ需要が広がる可能性があります。日本企業がベトナムで新規顧客を開拓する際には、マクロ経済の数字と現場の調達・販売構造をセットで確認することがポイントになります。
出典:Tuoi Tre News「Manufacturing, trade sustain Vietnam’s economic growth: Standard Chartered」(2026年9月29日)
※本記事に記載したGDP成長率、鉱工業生産、輸出入、インフレ率などの数値にはStandard Charteredによる予測値が含まれており、ベトナム政府が公表する確定統計とは異なる場合があります。投資・事業計画を検討する際は、ベトナム統計当局などが公表する最新データもあわせてご確認ください。
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